『フェリーチェさん』の感想from映画生活 | アキラの映画感想日記

アキラの映画感想日記

映画を通した社会批判

2009-03-18の投稿

フェリーチェさん

 

 

和室ばかり

 

「フェリーチェ…フェリーチェ…一度でいいと何度云っても彼女は、私の名を呼ぶ時には確信を持てないかのように必ず二度繰り返すのだった」長崎で漁師の娘を娶ったオランダ人。彼女に愛されている確信が持てないと悩み苦しんだ結果、男は妻を残し日本を去った。それから5年後、長崎に戻った彼は妻の足取りを追って東京へと北上する。妻との思い出を捨てる為に。だがその道中で彼はそれまで自分が妻に愛されていた事実に気付かなかっただけであった事に気付き始める。日本とオランダでは感情の示し方が違うから。この夫婦のドラマはまるでオランダ版『パリ、テキサス』とでも云うべき切ないすれ違い。

 

明らかに低予算のセット撮影がバレバレなのが少々キツイ。舞台となる明治の日本を再現する費用なんてない。道中の情景は全て資料写真の挿入。横浜を去るシーンでの霧で霞んだ橋(こうすればバックを作り込む費用がかからない)以外のドラマは全て室内で展開。それでも窓の外に日本軍の旗を通らせたり当時と変わらない海の情景を見せたりと工夫はされています。せめて松竹あたりが協力していれば屋外のセットも組めただろうに和室ばかりで話を進められるとどうも息が詰まります。息が詰まった方が内容には適しているのかもしれないが。覆水盆に返らず。その愛が手の中にあった事に気付いた時にはもう遅い。東洋人からすれば西洋人の深過ぎるメタフィジックな愛の形は夢想的で不安にさせるだけ。抱いてくれさえしない。彼女は愛の存在に確証が持てず繰り返すだけ…フェリーチェ…フェリーチェ。