2019-04-30の投稿
羊の木
住民殺しても保身か
過疎化した地方に元殺人犯たちを入植させるというキチガイ染みたプロジェクトを描いたコミュニティ群像劇。何よりも問題なのはプライバシーの問題って事で彼らが犯罪者である事を役所が地元民に隠したまま入植させるって所。加害者の人権擁護が過剰な現実へのアイロニーにも思えます。それは云わば一般市民への正当防衛権の剥奪。雇用主側には契約法上、事前に相手が前科者である事を知った上で精査する権利があります。リスクを把握させずに犯罪者という不良商品を労働力として売りつけられる詐欺商法。犯罪者は犯行を繰り返すリスクがあるのだから隣人には関係を回避する選択権が与えられるべきだが、そこを加害者の人権を考慮して隠蔽してしまうような理不尽な扱いが新たな犯罪を生む。クズの人権より住民の安全を優先するのが当然なはずだが、労働力の不足で仕方ないって所だろうか。
この決断は新年度から施行された改正入管法に似ています。為政者の保身と利益の為に住民の安全を犠牲にする背任行為。住民に知らせず犯罪者を雇用させるのは羊のふりをした狼を羊の群れの中に放つようなもの。その狼の中には構成し地域に包摂される者もいるだろうが、そんな義侠心ある美談ばかりに終わる訳がない。どんな恩も仇で返すようなクズだっているのだから。そんな人間社会に不適合な危険因子は隔離か殺害をしなければ一般市民の安全が脅かされるであろう事は火を見るより明らか。そんな当然の帰結を描くだけの映画。毎回ブラックな猛毒がまぶされた吉田大八作品だが最近の作品は洒落になり切れてなくて笑えない。
