『刑務所の中』の感想from映画生活 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

2006-08-31の投稿

刑務所の中

 

 

質素なユートピア

 

こんな生活は耐えられないだろうな。健康的だけど健全過ぎて気が狂いそうだ。街にはたまに殴り殺したくなる奴もいるけど犯罪に手を染めないように気をつけなきゃ。この主人公はアーミーマニアで銃器の不法所持で捕まった。どーも彼には塀の中の生活が性に合ってしまったようだ。食事や生活の些細な事に感動してるけど北野映画を上映したりテレビが見られたりSM雑誌を回し読みしたりシャバと縁遠い様でも俗世の刺激が入って来るってのが嫌だ。彼の場合もそうだが私も独居坊の生活のほうが性に合っているかもしれない。一番風呂って所が良い。比較的プライバシーもあるし。入院じゃ個室にしてもらうと料金が上がるのに刑務所じゃ悪い事したら個室に入れるってちょっと変。

 

崔洋一の作品って初期の『いつか誰かが殺される』とか起承転結がハッキリしてるものより、この作品みたいにキャラで魅せるタイプの方が私的に好み。刑務所だから皆丸坊主で同じ服装なのに個々のキャラがちゃんと立っていて笑える。紋々の仁義の義の字に言遍が入ってたりいい年こいて子供もいるのにシャブ中だったりチンコの先にティッシュ付いてたり。きっとマンガ版に忠実なネタなのかも。妙に清潔感がある描き方のおかげで際立ってる。質素に暮らす事で子供みたいに無垢に喜べるユートピアみたいにすら感じさせる生活空間だが、そんな暮らしをする自分を想像すると気持ち悪くて耐え切れない。腐った人間は清い世界には入れないのです。でも清い世界を羨ましいとは思いません。