2010-08-27の投稿
冷たい雨に撃て、約束の銃弾を
仁義ある復讐
この作品は『ミッション』と『エグザイル』に続くノワールシリーズ三作目と呼ばれているが、はたして本当にそうだろうか。話の肝が裏社会で有能な男同士の絆であり、それ以外の要素が徹底的に排除され、悪役の背景すら充分に描かれないという徹底ぶりは、どの作品も共通している。ただ、その絆の質は次第に変化しているようにも思え、それに比べると最近の『文雀』などの方が、この作品に近い硬派な男たちの仁義が描かれているように思えます。女子供の前では敵同士でも拳銃をしまい食卓を囲む。このシリーズには男同士の食卓が必ず出て来るが、その意味はシリーズの他の作品よりも最近の作品群に近く最も明確。つまりは作品を重ねる毎に描こうとする男たちの絆が方向性として安定しつつある。その先にあるのは、かつてサムペキンパーが描いていたような悲哀。
フランス語の会話で映画は始まる。主人公はレストランを経営するフランス人。娘の家族を殺された復讐の為に香港にやって来た。そこで雇った4人の殺し屋。この物語は彼らの間に生まれる信頼関係を軸に展開する。状況が根底から変わっても約束を果そうとする男たちの仁義。それ故に妙に長いこの邦題なんだろうけど、内容の潔さに対してあまりに愚鈍なタイトル。どれだけロードショーする配給側にセンスがないんだって感じ。まるでマルシャルのフランスノワールに付けられる邦題のような文系崩れの戯言センス。元のタイトルである”復讐”の方が導入部を明確に後半の展開に先入観を与えない適切なタイトルです。確かに雨の中で仲間の顔を忘れて迷うシーンはこの作品の肝。そこで雇われた4人は守るべき仁義がどこにあるのか決断を迫られる訳だから。無駄死にだとしても約束を果さんとする男気。邦題そのまま。時代錯誤なほどの熱さがある決断。
