『ティラミス』の感想from映画生活 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

2013-11-02の投稿

ティラミス

 

 

鬼才ダンテ・ラム

 

幽霊とのラブストーリー。あまりにもボーイミーツガールな始まり方をする純愛モノ。地下鉄で出会ってすぐに一目惚れで恋に落ちたふたり。男は後天的な聾話者の郵便局員。女は夢を掴みかけたダンサー。ところが互いの想いを伝える間もなく出会った直後に女は交通事故死。幽霊として男の前に現れる。どうも死ぬ瞬間に想い合っていた相手だけには幽霊になっても自分の姿が見えるらしい。ダンスコンテストで決勝にまで進んでいた女は一週間後に舞台に立つ自分のチームが気がかりで決勝が終わるまで成仏できない。そんな女の幽霊に男は自らの肉体を貸してダンサーとしてチームに加わる。チームの仲間を助け親友を勇気づけるべく男の肉体で踊る。ふたりは互いが人間と幽霊である事を忘れて親密になってゆく。だが決勝が終われば彼女は成仏しなければならない。いくら離れたくなくとも共に男が死んだとしても来世では離れ離れ。そうなりたくなくて現世に留まる老夫婦もいる。だが黄泉の使いは幽霊を成仏させるべく冷酷に彼らを引き裂く。彼らに連れ去られた女を奪い返すべく男は黄泉の世界に飛び込む。「逃げよう」「どこへ?」「俺たちが引き離されずに済む所までさ」

 

ダンテラムというと、どうしても凶暴なヴァイオレンスアクションの印象が強いけれど、こんなファンタスティックなラブストーリーも撮っています。でもあまり優しい語り口を狙いはしない。いつも通りの彼らしいイケてる映像構成。最近の香港映画界じゃ彼ほどの躍動感やバイタリティがある激しい作風の監督はなかなかいない。私が見た中でも『野獣刑警』から『ブラッドウェポン』まで今風の心地良い語り口の中に凶暴なセンスを感じさせる作品は多い。今回はダンスシーンを激しく見せる事で作品に躍動感を出したと監督本人が語っていた。本人も意識してやっているようだ。確かにダンスシーンの映像的完成度は高いけれど音楽がイマイチ良くない。デレククォックの『燃えよ!じじぃドラゴン』にしてもアンホイの『ヴィジブルシークレット』にしてもトミーワイの曲はいつもパンチが足りないのだ。だが、それ以外にも彼ならではのカット構成に唸らされるシーンはある。例えば前半の満員電車の件なんて、いかにも彼らしい狭い空間を使ったカット構成の巧さがある。この直後に作った『ツインズエフェクト』の冒頭でも列車内でヴァンパイアと戦う印象的なシーンがある訳だが、場所はともかく『密告者』のクライマックスで廃校になった教室の机の山が崩れて来る中での死闘など、思うように身動きが取れない空間の描き方が非常に上手い。その手腕に毎回感服させられてしまうのだ。ダンテラムは今現在、香港映画界で最も注目すべき監督のひとりです。