2008-04-24の投稿
ふくろうの河
森は続くよ何処までも
米国の南北戦争を舞台にしたオムニバス作品。臆病な兵士が任務中に威嚇射撃で殺めてしまった相手の亡骸を探しまわる話と、森に迷い込んだ子供が夥しい数の死体と遭遇する話と、処刑を逃れた男が妻の待つ自宅に逃げ帰ろうとする話。一般的には3話目が人気が高く当時『ミステリーゾーン』でもリメイクされたネタだが、この手の一発どんでん返しは今にしてみれば大した衝撃はない。私としてはもっとトリッキーな内容を期待したが、ここで試みているのは典型的な幻想譚。森を歩いた人々が迷い込む少し不思議な世界。その妙な不安に包まれた世界を雰囲気押しで描いてるものだから台詞が少なく森の中を歩く描写ばかりが永延と繰り返されます。
一応『冒険者たち』でも知られるアンリコの初期作品だけど娯楽度は低く、むしろロッセリーニの『戦火のかなた』みたいな戦争の解体し方をもっとペシミスティックにやってる印象を受けました。でもメロドラマみたいに悲しい音楽で煽ったりせずに森の音を印象的に使っています。悪夢のような3つのエピソードから衝撃は受けなかったが、この映画には不安でとどことなく悲しげな空気が漂っています。人を殺したくはない兵士、悲惨さに理解が及ばず戦争ごっこを続ける子供、たまたま橋に近づいただけで巻き込まれ処刑される一般市民。愚痴をこぼしながら歩く兵士、死体を踏み分けながら歩く子供、自宅に向かい疾走する市民。見ているこっちまで、あの森の中をずっと彷徨い二度と森の外へは出られないかのような絶望的な感覚を残してくれます。
