007主演のイメージとして最も適切なのはピアスブロスナンだと思います。
彼は後に政治家の役とかもやっていて人当たりの良さを感じさせるからです。
それに比べて最も適さないのが現在のダニエルクレイグだと思います。
あんなにゴツくて武骨で無口な武闘派は諜報員にはなれません。
スパイも刑事もジャーナリストも基本的には情報収集が仕事なので
実際には誰でも心を開き易い美男美女であるに越した事はありません。
それも適度の。あまりに整い過ぎていると逆に警戒されますから。
それでいて気が良くノリが良く人当たりが良い人が向いています。
井戸端会議が大好きなおばちゃんや床屋政談が大好きなおじさんの中に
自然に溶け込めるような人こそが最もスパイに相応しいのです。
この才能は調査報道を生業にするジャーナリストにも求められます。
私の場合はノリが良くないという点で記者には向かない人種でした。
それこそ師匠の原一男氏は相手の本性を引き出す才能が天才的で
その才能に支えられている事に本人自身は無自覚であったが
そこだけはどうあがいても私には真似できなかった。
ただ絵の才能があったのでカメラマンとしては信頼されたし
重要な局面に偶然居合わせる運と直感があったので
カルト的人気を誇るドキュメント作品を撮る事はできました。
ただもし私にも本音を引き出す才能があったなら
無駄に修羅場をくぐる事もなく同じテーマを表現できたでしょう。
その手の才能には私は恵まれなかった訳だが
別にそれが報道の現場を去った理由ではなく
マスメディアが思想ポルノに腐ったからという訳でもなく
単純に不況下で傾いた制作会社の都合での解雇と
広告関係からのオファーに流されCM業界に鞍替えしただけです。
ただ今更またドキュメント作品を撮りたいとは思いません。
スマホの性能が上がった今となっては現実は誰でも撮れるから
この先もプロとして映像表現に関わり続けるからには
素人には作れないフィクションを作り続ける必要があるからです。
CGツールも今となってはオープンソースが多くて
収益を出さない限りにおいては無料で使えるツールが増えたので
上手い素人がプロの品質を追い抜くなんて現象もざらに起きます。
そんな中で少なくとも上手い素人に肩を並べる仕事を続けている。
ある程度の品質を保証できる映像作家には今でも人材として
それなりに希少価値があるから仕事を貰い続けられるのです。
ドキュメントのフィールドでは取材才能がある素人に敵う訳がない。
自然に相手の懐に潜り込む能力では一般的な営業にすら勝てません。
だから結果的には絵の才能だけが私を生かし続けているのです。
才能があったから好きになったのか好きだから能力が上がったのか
どちらにせよ私にとって映像創作は息を吸うようなものであり
生業なので最も求められるジャンルにスライドし続けるしかない。
現実への憤りは激しい演出というフィクションの中で発散し続けます。