『ルイジアナの夜明け』の感想from映画生活 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

2005-11-01の投稿

ルイジアナの夜明け

 

 

外野が騒ぐ

 

シュレーンドルフといえばドイツの巨匠なのだが、この作品では

何故か米国地方に残る黒人差別問題を取り上げている。最近では

ヴェンダースも米国特有の意識問題を、モロに取り上げていたが

昔から世界的な問題意識は、軍事的にも強大なこの多民族国家に

まるで世界の縮図であるかのように、象徴して語られる事が多い。

特に旧共産圏の経済が自由化した今となってはこの国に見られる

資本国家の弊害や異文化交流の軋轢が生み出す問題は、世界中の

あらゆる国が将来直面する問題です。オリバーストーンみたいに

それを風刺化する作家もいれば、リドリースコットの様に象徴化

してみたりトニースコットみたいに背景のギミックにしてみたり

アットタイムな議題に対するアプローチ方法は様々だが社会派を

避けるドイツと違い現代を表現するには米国が都合良いのだろう。

 

この物語の悪役は誰だろう。私が思うに実は自分の土地で白人を

撃ち殺したマチューを庇ったヒロインこそが、偽善者に見えます。

現場仕事で黒人を追い詰め撃ち殺された白人は肉体労働者であり

追い詰められた黒人も当然肉体労働者です。過酷な労働において

ナーバスになり暴力沙汰が起きる。搾取される側同士で殺し合う。

内在する人種差別よりも貧困と過重労働こそが人間を凶暴にする。

そこへ搾取する側のお嬢様が来て、黒人を守る為にと偽装工作を

始める。だが、その行動は事態を複雑にするだけで互いの為には

ならず時代の流れを見ない彼女の冷静さを欠いた横槍に過ぎない。

高校へ通う被害者の弟にはチームメイトである黒人の親友もいる。

警察は事情を訊いて、社会秩序に反する殺人犯を捕えに来ただけ。

自首して正当防衛を立証すべき状況。だがそれをヒステリックに

騒ぎ立て私刑を行おうとする集団もいます。彼女がとった行動は

彼らと相反する擁護の姿勢でありながら、彼ら同様に悪戯に事を

荒立てる要因を作っただけ。事件の少ない田舎で起きたトピック。

そのサブジェクトを利用し騒ぎ立てようとする余計なヤジ馬根性。

それを"守る為に"とは、実におこがましいブルジョワの傲慢です。