『ライブフレッシュ』の感想from映画生活 | アキラの映画感想日記

アキラの映画感想日記

映画を通した社会批判

2007-02-28の投稿

ライブ・フレッシュ

 

 

寝取った者勝ち

 

「通りを見てご覧、お前はラッキーだ、こんな幸せな時代に生まれられて」と最初と最後だけ社会派風に背景の話になるけど、内容は見事なサスペンスの快作。童貞を捨てたヤク中女に恋をした青年がチンピラ刑事たちの情念沙汰に巻き込まれ6年の実刑を食らう。刑務所の中で肉体と知性を磨いた青年は復讐を決意。その方法とは刑事たちの妻を寝取る事。嫉妬に狂った刑事たちは自ずと墓穴を掘る。どっちが惚れたとか男女関係の優劣って愛していればさほど気にならないってのは確かにそう感じる瞬間はあってもきれい事で、その力関係が生死を分ける事もある。この作品のかけひきは何とも露骨かつ根源的。

 

アルモドバルがイグリシアスと組み始めて今のスタイルになったばかりの頃の作品。この頃からアカペラの歌声が所々に挿入されるが、それよりも印象に残ったのは車椅子バスケシーンの度に挿入されるアフロケルトサウンドシステムのウィリーリール。健全に見える障害者スポーツマン。刑事たちの片割れで青年に撃たれて半身不随になった後にヤク中女と結婚した男。彼の異常なまでの警戒心と嫉妬心。酔っぱらいのゲロや犬のクソで車椅子が汚れないようにいつも空を見上げられず地面ばかりを見てる。不便な生活でナーバスになっている。それ故にすぐ青年をストーカー扱いし街から出るよう警告する。道理からすればお前が出て行けと云いたい所だが青年は冷静に説き伏せる。この妙に落ち着いた狡猾な眼差しが怖い。