2008-11-20の投稿
アキ・ラーの少年たち
地雷を踏んだ
私の息子たちの話。それは嘘。元ポルポト派兵士アキラが除隊後ボランティアで経営する児童福祉施設での日常を追ったドキュメント。この施設で受け入れているのは未だカンボジア中に埋まっている地雷の被害で手足を失った障害児たち。アキラ自身は自ら地雷除去を買って出る傍らに障害児の面倒を見る。そして信管を抜いた地雷を保存して観光客やボランティア団体に公開。歴史の暗部を語り継ぐ。その施設に集まった子供たちは手や足がない事以外は何ら普通の子供と変らない。ただ健常者と一緒にいると妙な同情を受けて居心地が悪いから障害児同士で集まる。彼らの会話は遠慮なし。「うるせーな足がないクセに」「そっちだって手がないクセに」健常者が口にすればたちまち問題になるような侮蔑の言葉をふざけ半分に投げ合う。
なかなか躍動感があって楽しい作品でした。主人公の少年は祖父が踏んだ地雷の巻き添えを食って右腕がない。成長で骨が伸び続けているので腕の切れ目の皮が突っ張って未だに痛いらしい。でも彼の腕白ぶりを見ていると彼が片腕にハンディキャップを負っている事など忘れそうになります。プロレスごっこで健常者すらも打ち負かす。この作品はリンリー監督が施設の障害児たちの輪の中に入り込んで撮った典型的な密着モノな訳だが、カメラに対する子供たちの緊張はなく、さり気なく素の部分に迫る良作に仕上がっています。カメラを意識しない何気ない日常の方が無意識に凄く大胆な言動が表れたりする。監督は「戦争の悲惨さは誰でも充分に知っているから、あえてその犠牲者たちの明るい面を撮った」と語っているが、そんな意図以前にこの対象者と向かい合う方向としては対象者のヴァイタリティを充分に引き出せる適切な方向です。
