2014-11-22の投稿
ハイウェイ・バスジャック
日本でのロードショーに至らずソフト化だけされている映画の中にはジャンル映画風に誇張されたキャッチコピーで売り出している物も多い訳だが、これはその典型。あたかもノンストップサスペンスアクションみたいなパッケージにしてあるが、どちらかといえば内容は社会派人間ドラマって感じ。実際の事件を元に脚色されたギリシア映画。警察にハメられた上にケツ掘られたアルバニア系移民が無実を証明すべくバスジャック事件を起こしアルバニア国境へ向かう。だがアルバニア側の対応はギリシア側よりも冷酷だった。シドニールメットの『狼たちの午後』みたいにストックホルム症候群で人質が犯人の味方になるなんてのはよくある話だが、ここにある関係は元々密接。狭い集落で起こした事件だから犯人も人質も顔見知りなのだ。だから互いに人情深い対応をする。それに対して犯人は男としてケツ掘られたなんて恥は晒せないから頑なに動機を語ろうとはしない。
それなりに見応えのあるドラマだが、イマイチ背景の説明が不充分。同じバスジャック物でもパジーリャの『バス174』では背景となる社会状況をドキュメントとして検証しているから分かり易いが、これはアルバニア側とギリシア側の関係すら分り難い。アメリカ映画ならメキシコに逃げれば治外法権だがギリシアとアルバニアではそうはいかないようだ。もっとバスの外の状況も描き込んで欲しい所だが、この作品は犯人の心情のドラマに終始してしまっていて残念。