『オオカミは嘘をつく』の感想from映画生活 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

2020-12-01の投稿

オオカミは嘘をつく

 

 

強姦魔を拷問

 

廃屋で隠れん坊をしているとクローゼットに隠れたはずの少女が姿を消す。その数日後に足の腱を切られショーツを下ろされ拷問と強姦の痕跡を残した状態で首なしの遺体が発見される。エグさからすれば韓国映画を思わせるような幼女連続誘拐殺人を背景にしたイスラエル映画。事件を追う刑事は素行に問題があって怪しい市民を拷問して強引な尋問手法で冤罪を生みかねない捜査ばかりをしている。いわばインモラルでヴァイオレンス要素の強いミステリーな訳だが、これが所々で登場人物の間が抜けてたりして笑えてしまう。その意味では重喜劇とでも呼ぶべき面白さがあります。この事件の容疑者は地元の教師で刑事からも被害者遺族からも生徒からですら疑念の目を向けられている。この男が真犯人か否かは分からないが被害者遺族の復讐心は暴発し彼を捕らえて刑事と共に非合法な拷問を開始する。

 

この被害者遺族の母親からの着信音はかつてヒトラーが熱狂したワーグナー。ユダヤ人からすればこの辺りのセンスは『デッド』で恋人からの着信音をダースベーダーのテーマにするようなものだろうか。とにかく指を折ったり皮膚を焼いたり爪を剥いだりと常軌を逸した残酷な拷問が行われる一方で、それを行う遺族と刑事が妙に飄々とした日常を過ごしてるギャップ感がやたらと笑えてしまう。この拷問を行う別荘は人里離れたパレスチナ国境付近でアラブ人テロリストが事件を起こす事もある危険地帯。狂気じみたユダヤ人同士が殺し合う一方でアムルディアーブのポスターを思わせるようなカウボーイ風のアラブ人が所々で登場して助けてくれる感じが妙に微笑ましく印象的でした。こいつが馬に乗ってる癖にいっちょまえにスマホ使いこなしてたりして時代背景がよく分からなくなって来るようなシュールなシーン。ちょっと風変わりではあったが連続殺人系のサスペンスとしても引き込まれるしコメディとしての笑い処も多く娯楽として最後まで退屈させない内容でした。