2006-11-17の投稿
恋する魚
家へ帰る
今年のアジア海洋映画祭は豊作だ。いや、海だから大量と云うべきかな。アジアの海ってテーマに囚われ過ぎずに、単に画面上に海が出てるだけの作品も対象にしてるから本当に面白い作品が集まったのかな。この作品に至ってはカスピ海。つまりアジアってよりも中東。現代のムスリムならではの男女関係が伺えるイラン映画。政治的変化や情報メディアの進化で男女の価値観が変わりつつある。この国と同じく回教の普及率が高いフィリピンやインドネシアの作品もその変化が考えるきっかけを生み良い作品に結び付いているかのようだ。まるで現代ムスリム圏映画祭だ。
かつて愛した妻を置き去りにしなければならなかった男。長い年月を経て妻が住む故郷に帰る。彼が投獄されていた事を妻は知らない。今また娘の恋人が卑劣な密告の罠によって投獄される。その若者を救う為に男は有能な弁護士を雇い手を尽くす。二度と同じすれ違いが起きて欲しくない。だが男の行動は妻に更なる誤解を与えてしまう。和解シーンを遠くで見守る周囲のリアクションで見せたり一人さまよう男の姿を追ったりその語り口はベタではない。特に妻が通行人に「道に迷ったのか」と尋ねられ「いえ家へ帰る所です」と返すシーンにはその含みの重さにガッツンとやられた。