『裸足の季節』の感想from映画生活 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

2021-08-20の投稿

裸足の季節

 

 

イスタンブールから遠く離れて

 

パナヒの『オフサイドガールズ』を思わせるトルコのフェミニズム映画。卒業した学生たちの海辺での騎馬戦でこの映画は始まる。キラキラとした青春の一幕って感じだが帰宅すると「男の首に股間を擦り付けて嫌らしい」と凄い剣幕で家族から咎められる。トルコってのはムスリム圏の端っこで欧州にも接しているのでアラブ文化にしては割と大らかな国柄なのでイランやサウジのように明確な法律で貞操義務が課せられている訳ではない。それでも日本と同様に地方集落には男尊女卑の封建的文化が残っているという訳だ。この物語のヒロインたちは5人姉妹で全員がお年頃。一番年下は13歳と若過ぎるがロリコン趣味なのかと思わせる程に5人がじゃれ合う姿をエロく撮っています。サッカー観戦や男遊び等、割と自由に生きて来た5人だったが学校を卒業した途端に自宅に監禁され半強制的な縁談で嫁がされて行く。その状況に耐え切れなくなった末っ子は牢獄のように改装された自宅からの脱獄を計画する。フェミニズムに同調できるかどうかは別として、この親から隠れて逃げようとする娘たちを見せるハラハラ演出はやたらと上手かった。それこそ息を呑むような演出。

 

脱出に力を貸してくれた運転手との信頼関係とか姉たちの恋愛模様とか教師への依存関係とかドラマとしては中途半端に感じる要素も多かったが意外にも追っかけとしてのサスペンス感に最も優れていました。ジャンルを人間ドラマではなく脱獄サスペンスにすれべいいのに。とにかく都会に逃げさえすれば封建的価値観から解放されると正に脱走劇を繰り広げるのです。ただ縁談で嫁ぐ人生と都会で娼婦にでもなる人生のどちらが幸せかは微妙です。『40』等トルコのノワール映画を見るとイスタンブールの娼婦たちも悲惨で欧州圏へ亡命したがってる位ですから。とにかく現状を脱したいというジョージルーカスの『THX-1138』にも描かれた愚行権行使の若気の至りって感じ。これ位に向こう見ずな瞬発力を損得計算より優先する若者は応援したくなります。