『ヤシの影で』の感想from映画生活 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

2006-09-25の投稿

イラク:ヤシの影で

 

 

夜空が燃えている

 

これはエグイ。何がエグイってフセイン政権ほぼ肯定なのかあからさまに米国だけを批判する構造になっている。現地人が撮った『イラク、わが故郷』でも日本人が撮った『LittleBirds』でも一応、フセイン政権時代の弾圧に軽く触れる程度の部分はあったが、この作品では全くそれがない。前半は幸福感溢れる現地の子供たちが不安になる様子を見せ中盤では米軍のバグダッド侵攻に伴う負傷者を見せつけ後半では混乱した今の状況と反米を叫ぶ人々を見せつける。監督はオーストラリア人か。ここまで露骨にやられると米国人に田舎者と馬鹿にされ続けてたオージーがここぞとばかりに批判の題材を得て糾弾する事でコンプレックスを払拭しようとしてるのではないかとまで邪推が働いてしまう。

 

確かに心は動かされ易い。同じ事を分り易く繰り返し刷り込む資本主義の凶器たるTVCFと同様にプロパガンダ効果は働く。全て米国だけが悪いんだと考えたくなる。単純思考を誘発する危険な構成だ。どんな悪政でも秩序が保たれないよりはマシ。だからこそ首相を捕らえるからには新政府の明確なヴィジョンは不可欠。最近またタイでクーデターがあったがタイの場合、ムッソリーニを処刑したイタリアと同様に首相よりも実権を握った王政が軍のバックにあるからこそ混乱しないのであって米国のヴィジョンにあった新政府にはそれだけの実権がなかった。その思慮不足で結果的に犠牲になるのは現地の市民。単にファシストを倒すだけでは市民は救えない。弱い方へシワ寄せが行くのが社会の仕組み。この失敗から米国は何か学んだかな。