『セールスマン』の感想from映画生活 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

2019-12-31の投稿

セールスマン

 

 

強姦魔を晒せ

 

ちょっとトリッキーなミステリーばかりを撮ってたイランのファルハディが今回はテンプレ通りのミステリー。つまり事件が起きて、それを調べて真相に迫ってゆくってな内容。主人公が趣味でやってるアマチュア劇団が有名戯曲"あセールスマンの死"をやっていて、そのアドリブで主人公の心境が重なるって事でこのタイトル。とある粗悪建築マンションから一時的に退避せねばならなくなった主人公夫婦が売春婦が住んでいた部屋に入居した事で起きた暴行事件。酷い怪我で命を失いかけた妻と復讐心を燃やす夫。少なくとも世間には「あの男の妻は強姦され貞操を破られた」と認識されるのだろうからメンツを潰された怒りは収まらない。そこにあるのは妻への愛情なのか男としての世間体なのか。その間で揺れ動く気持ちに妻が敏感に反応するドラマとして芝居のクオリティは高い。それぞれに腹にイチモツ抱えながら事件が事件だけに感情を剥き出しにはできずに劇中劇の中のアドリブとして吐き出されるって訳だ。イランはアラブ圏の中では割と進歩的だから欧米に近いオープンな価値観も浸透してはいるが、やはり独特の思い遣りや恥の観念から来るしがらみはあるようだ。それが犯人とのやり取りからも滲み出ています。ただ強姦魔に真実を隠蔽する権利を許してはならない。いかに家族に優しくとも女性を虐げる卑劣な犯罪者には、それ相応の罰があって然るべきです。それこそ放置すれば再犯率が非常に高いのが強姦案件です。やはり再犯防止の為にも事実を晒す事で犯人を世間的に潰す位は妥当な処置です。そうでなければ本当の事を云われて逆ギレする社会の敵みたいなクズを利する事になります。