『トゥルクシブ』の感想from映画生活 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

2007年10-04の投稿
トゥルクシブ

 

 

大地を攻撃せよ

 

度重なる酷い旱魃で綿畑が枯れつつある中央アジアの農地。生産率が落ちた年にはロシアの黄金と引き換えにエジプトからの輸入で需要を賄わねばならない。広大なる資源の宝庫たる自然を原住民たちは克服できずにいた。カザフスタンの砂漠では綿を運ぶ旅人が砂嵐に倒れ、高地の田畑は成す術もなく干上がる。そこでソビエトの優秀なる労働者たちは産業機器を開発。岩を砕き地形を変え鉄路を敷き田畑にはコンバインを導入。ドヴジェンコの名作『大地』に描かれる時代へと繋がる歴史の一コマ。

 

1929年に制作されたソビエト各地の農業発展に関するドキュメント。当然ながらモノクロでサイレントなのだが、ナレやCGを多用した最近の作品でも稀なほどに構成が上手い。地図をコマ撮りで動かした鉄道の説明など現在ではCGなどで説明される部分の方法論もこの作品で既に完成されている。何よりも問題と解決策を提示する順番が複雑になり過ぎずかつ興味を途切れさせないシンプルかつ巧妙な構造に仕上がっている。技術的な手軽さに溺れる現在の作家たちにも充分に見習うべき点が多い。<br><br>辺境の地だった中央アジアの農業が文明の利器によっていかにして発展したか。過酷な自然に果敢に挑み根を張ろうとする労働者たちの開拓魂とでも呼ぶべきヴァイタリティには感動すらも覚え、その知恵には頭が下がるばかり。「自然を克服せよ」単純に生きる為の知恵が大地と闘う。「大地を攻撃せよ」果実を勝ち取る為には大地と闘わねばならない。「勝利すれば自然は惜しげもなくその恵みを与えるだろう」こうした先人の知恵があってこそ我々の需要は満たされる。単純な鉄道の宣伝映画として企画された作品ではあるが、農産現場の苦労が伝わって来たので摂理の厳しさを再認識。