2008年11-20の投稿
脱走者
ピケ破り
ナチス政権樹立前夜のドイツ造船業の町。ロシア革命の影響で労働者たちはブルジョワへの抵抗を続けていた。ソビエトへ輸出する船の完成を待ち労働者たちはストに突入。ところが組合は資本家の事情にも耳を傾け足並みは揃わない。結束して決行しなければストの意味がない。生活に困ってピケ破り(スト中に働く者)が続出。律儀に結束を守った者は路頭に迷う。妻子を養う金すらない。仕事を失い息子たちは餓死。そんな混乱の中、ソビエトからドイツ労働組合に労働者派遣の要請が来る。ソビエトに渡った労働者たちは厳しい労働環境の中、必死に働き社会党から課せられたノルマをこなす。そんな彼らの業績を褒め称える社会党の集会でドイツ人は自己批判。「我々はストライキの貧困に耐え切れずに逃げ出した脱走者だ」
云わずと知れたロシア映画創生期の三大巨匠プドフキンのトーキー第一弾。いかにも母国政権に気を使った内容。ドイツ人は皆ソビエトに憧れていたかのような描き方です。この後ナチス党が反旗を翻して来るとは夢にも思っていないのだろう。それにしても音の入り方が今じゃ考えられない程に雑です。MAの機材が充分に開発されていなかったのだろうか。演出意図であえてやっているようには見えません。生音や台詞が入る度に音楽が途切れています。ミキシングされていないシングルトラック。調音し直して欲しいものです。それと内容の方もエイゼイシタインの『ストライキ』に比べると勢いが足りないせいか欺瞞を感じてしまいます。組合の足並みが揃わないって問題は個人の決意ひとつ位じゃどうにもならない問題のはずなのにご都合主義的にオプチミスティックなクライマックスが用意されています。ただそれでも冒頭の集会や労働風景やデモや弾圧のシーンはさすがに凄いエネルギーに満ちています。