神奈川県 鎌倉
舟木一夫が出合い演じた時代劇⑫
「舟木組」
―夕刊フジ「舟木一夫 出会いと別れの80年」連載中―
~下に夕刊フジ公式サイトzakzakの記事掲載~
―後半に第131回「オードリー」―
二百十日の祭の後、紙垂がひらめく田畑
本題に入る前に―。立春から210日目が雑節のひとつ「二百十日(にひゃくとおか)」です。日付では9月1日頃になります。二百十日は、農家にとって稲が開花する大事な時期ですが、農作物が台風の被害を受けやすい日でもあり、厄日として扱われてきました。9月11日頃をさす「二百二十日(にひゃくはつか)」や8月最終日の「八朔(はっさく)」と合わせて“農家の三大厄日”とされました。夏目漱石の短編小説「二百十日」(1906年)では、阿蘇山に上ろうとした二人の青年が二百十日の嵐で登頂を断念しますが、この年の「二百十日」は9月2日。また、1923年9月1日に発生した関東大震災時の「二百十日」も9月2日でした。 令和6年の二百十日は8月31日(土曜日)です。
「二百十日」は台風の発生が多い頃でもあります
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本題に入ります―。舟木一夫さん自身は時代劇をどう捉えているのでしょうか。舟木さんが演じ語る時代劇は「娯楽時代劇」のことですから、舟木さんにとっての娯楽時代劇についてこれまでに本人に直接インタビューさせていただいた際の話を中心に書き留めておきます。まず、舟木さんは自身で娯楽時代劇を演じる意義について、次のように語っています。
「娯楽時代劇というのは屈託なく肩を凝らさずに観ていただくのが大事なんです。その意味では、のっけから芝居の評価を気にせずやっていく必要があります。これは本職の役者さんにはきついことだと思います。ですから、僕がそういう題材を選んで演じさせてもらっているわけです。そんな舟木の娯楽時代劇を観たいというお客さまがいらっしゃることは、50周年記念公演「花の生涯」(2013年6月、東京・新橋演舞場)で証明されましたね」
逆に言うと、舞台で娯楽時代劇を演じる、演じられる役者がほとんどいなくなったということです。もっとも、舟木さんの力だけで演じられると思っている訳ではなく、舟木さんは「ヨイっちゃん(林与一)、キヨちゃん(長谷川稀世)、ハコちゃん(葉山葉子)がいてくれて、なんとか持ちこたえられている」と話していました。 これは舟木さんが40周年を超えた頃から強く意識し始めたことで、与一さん、長谷川さん、葉山さんら娯楽時代劇の骨法(礼儀・所作)を踏まえて演じてくれる役者仲間が7割以上いる座組(=舟木組)を編成して様々な舞台を展開してきたことを指しています。
舟木さんによると、娯楽時代劇というのは「忠臣蔵」や「清水の次郎長」などの定番の時代劇、「眠狂四郎」や「新吾十番勝負」など正統の時代劇、いい意味で“遊び”というか融通の利く時代劇の3つに分類でき、それぞれが3分の1ずつを占めていると言います。舟木さんの作品でいうと、「花の生涯」や「八百万石に挑む男」などは骨太で歯ごたえのある正統派の時代劇、「いろは長屋の用心棒」などは手の中に入れて握り方によっていかようにも変化する融通の利く時代劇ということになります。
そして、「花の生涯」が成功したのは「娯楽時代劇の何たるかを知り尽くした里見浩太朗という方の存在があったからあの台本が作れたし、固くならないお芝居に仕上げることが出来ました」と分析。「八百万石に挑む男」については、「尾上松也という方の存在が大きい。芝居のスタイルが僕と似ていて、いい相手だった。とにかくあの舞台をやりながら『高校三年生もついにここまで来たか』としみじみ思った」と話してくれました。
ところで、映画から本格的な時代劇が消えたのは1970年半ば。テレビの台頭で各映画会社も銀幕からブラウン管にシフトしてテレビ時代劇が活況を呈しましたが、80年代半ばに若いタレントにスポットライトが当たり始めると、各局とも時代劇の番組を減らしていきました。NHK大河ドラマ「独眼竜政宗」の大ヒットで一時は持ち直したものの、2011年にTBS系の「水戸黄門」が終了すると同時に地上波から時代劇のレギュラー枠が消滅してしまいました。舞台になると、その衰退ぶりは一層顕著になります。その意味でも、役者・舟木一夫と舟木組の頑張りは商業演劇界に“喝”を入れることにもなりました。
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2024年になって産経新聞は「今、時代劇が熱い」という見出しで特集記事を掲載しました。それによると、「年明け早々、米ハリウッド製の大型時代劇『SHOGUN 将軍』が話題になりました。1980年の米ドラマを、ハリウッドで活躍する真田広之さん(63)の主演でリメークし、動画配信サービス『Disney+(ディズニープラス)』で配信中だ」ということです。
また、2000本以上の映画を送り出した東映京都撮影所を擁する映画大手、東映の吉村文雄社長(59)は1月、都内で記者会見し、「京都撮影所で、時代劇を毎年、1~2本作り続ける。時代劇の面白さを世界の方々に知っていただきたい」と宣言しました。来年1月には、直木賞作家・垣根涼介さんの同名小説が原作の「室町無頼」(入江悠監督)を公開するということです。
草彅剛さん(49)主演で、武士の仇討ちと囲碁、父娘愛を巧みに絡めた「碁盤斬り」(白石和彌監督)、池波正太郎生誕100年を記念した松本幸四郎さん(51)主演の「鬼平犯科帳 血闘」(山下智彦監督)なども公開されました。幸四郎さんの「鬼平」は、さらにCS時代劇専門チャンネルで「でくの十蔵」(6月8日)と「血頭の丹兵衛」(7月6日)が放送され、シリーズ化の予定です。
CS「時代劇専門チャンネル」を運営する日本映画放送常務の宮川朋之さん(57)によると、海外では「コスチュームドラマ」と呼んで時代劇にスポットが当たっています。デジタル道具が発達した現代が舞台だと、人間ドラマが描きづらくなったからではないかと言います。ディズニーが「将軍」を配信することをみても、時代劇を巡る変化は確実に起きていると宮川さんは見ています。
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美月と錠島が錠島の母を荼毘にふす
131回。錠島(長嶋一茂)の母・正子(島村晶子)が危篤と聞き、錠島に伝えますが、「俺には関係ない。死ぬときは一人で死ぬんだよ」と言います。美月(岡本綾)は「私の意思で一人で行きます」と言って、神戸の病院に行きます。病室に入ると、正子はダイナーの写真立てを握りしめて寝ています。苦しみ始めたため、美月が先生を呼ぶため病室から出ると、錠島が立っていました。美月が正子に息子が来たと声をかけると、正子はかすかに反応します。錠島は正子を見つめ、正子の手紙を出して正子の前で破り捨て廊下に出ます。美月が部屋を出ると、廊下で錠島が泣いていました。
それから3日後、美月と錠島は二人きりで正子を荼毘にふしました。大京映画に戻ると、「魔境の剣士 ムサシ」が高視聴率でスタートしている表が張り出されていました。そこへ、錠島が入って来て「次の台本はあるか」と聞いた後、美月に「いろいろ有難う。やっぱりオードリーは女神だ」と言って出て行きます。美月に笑顔が戻ってきました…。
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夕刊フジ「舟木一夫 出会いと別れの80年」好評連載中
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舟木一夫2024年コンサートスケジュール