“人気スポットの”鎌倉高校前踏切=神奈川県鎌倉市

舟木一夫が出合い演じた時代劇④

明治座」㊤

 

―後半に第115回・116回「オードリー」―

 

 

 本題に入る前に―。「お盆」は“盂蘭盆会(うらぼんえ)”または“盂蘭盆(うらぼん)”を略した言葉とされています。2024年のお盆は“盆の入り”の8月13日(火)から16日(金)までの4日間(8月盆)が一般的ですが、東京をはじめとする一部地域では7月13日から16日の4日間(7月盆)で行われます。お盆はご先祖様をお迎えして感謝を伝える期間で、自宅でお迎えの際には玄関先などで“迎え火”を、お見送りの際は“送り火”をするのが通例です。また、墓参りは“迎え盆”の13日に行くのが一般的で、ご先祖様の霊を迎えるため“送り火”を焚きます。キュウリやナスに棒を刺して作る供物の精進馬はご先祖様の霊が乗るためのもので、キュウリの馬で早く家に辿り着いて欲しい、ナスの牛でゆっくり帰って欲しいという思いが込められています。

 

   

 

昭和の明治座

 

 本題に入ります―。舟木一夫さんが“出合い演じた時代劇”を語るうえで欠かせないのが、大阪に続いて東京で初めての1か月座長公演を行なった日本橋浜町の「明治座」です。舟木さんはデビューから4年目の1967年から1973年まで7年連続で明治座の座長を務めましたが、実はこの7年というのは舟木さんが“寒い時代”に向かい始めて行く時期とも重なっているんです。意外に早く訪れている“転落”への足音を確かめながら㊤㊦の2回に分けて振り返っていきます。

 

春の特大号・別冊・近代映画・1967年5月号・舟木一夫

 

 舟木さんと明治座との出合いは1967年で、初回の座長公演は4月4日から30日まで。演目は昼の部が作&演出・村上元三の「維新の若人~新撰組~」と「ヒットパレード/春姿・花のステージ」、夜の部が作・川口松太郎、演出・戌井市郎の「春高楼の花の宴」と「ヒットパレード/星野広場に集まれ!」でした。川口さんは舟木さんが新人賞受賞の会場で歌いながら涙を流すシーンを静岡県伊東市の川奈ホテルのテレビで見て、「舟木君の舞台を書く時は感傷を交えたロマンで行こう」と決めていました。

 

 

 

 舟木さんは座長公演の相手役を考えていた時、たまたま見ていたNHK「大岡政談・池田大助捕物帳」に出演中の美濃・光本幸子さんが目に留まりました。美濃は南町奉行所の役宅に腰元として仕え、大助が難事件にぶつかると身の危険も顧みずにけなげに動くという役。舟木さんは直感的に「この人だ!」と閃き交渉してもらった結果、GOサインが出ました。舟木さんは50周年記念曲を考えていた時も、何気なく見ていたテレビで三波春夫さんの「明日咲くつぼみに」を聴いて直感的に決めましたね。

 

光本幸子さん NHKアーカイブス

 

 光本さんは1943年8月25日、東京生まれ。舟木さんより1歳年上ですが、“サッちゃん”と呼んでいました。子供の頃から舞踏家・六代目藤間勘十郎に師事し、12歳で明治座の舞台「望郷の歌」でデビュー。初代水谷八重子さんに見いだされて新派入りしました。舞台やテレビドラマのほか、1968年8月27日に公開された渥美清さんの松竹映画「男はつらいよ」(山田洋次監督)の第一作に初代マドンナ・坪内冬子役で出演し、映画デビューを果たし、日本映画史に名を残しました。26歳でした。

 

男はつらいよ

 

 光本さんは同じ年の12月17日に公開された松竹映画「いつか来るさよなら」(川頭義郎監督)では舟木さんと映画共演を果たしています。舞台や映画だけでなく、レコードも「霧のマドンナ/女ごころ」「雨の宗右衛門町/みだれ刺繍」などを出していますが、同じ1969年7月には舟木さんとのデュエット曲「恋のお江戸の歌げんか」(「ああ!!桜田門」のB面。作詞・西沢爽、作曲・山路進一)もリリースしています。光本さんの芸域の広さとともに、ほのかな色気を漂わせているレコードです。

 

 

 

 ところで、舟木さんは1966年10月の大阪・新歌舞伎座での初座長公演で、“寄り合い所帯”のチームワークの難しさを体験したことを踏まえ、光本さんが所属していた劇団新派に「芝居の世界の行儀や礼儀作法を勉強したいので、新派で座組してその中に放り込んでいただけないでしょうか」と申し入れました。劇団が紹介してくれたのが長老格の一人、伊志井寛さんでした。生粋の江戸っ子で18歳の時に文楽の竹本津太夫の門に入り、27歳で新派劇に加入、48歳の時に劇団新派を結成していました。

 

 舟木さんは明治座公演が縁で伊志井さんを“おやじさん”と慕い、公私ともどものお付き合いになります。舟木さんは明治座で3年、4年と続けていくうちに周囲は舟木さんを“本物の役者”として見るようになりました。中でも、舟木さんが歌手としての生き方に迷い始めていた時、川口松太郎さんから「君の舞台姿はいいから、若いうちに劇団に入ったらどうだ」と声をかけられました。また、初代水谷八重子さんに至っては「舟木さん、新派に来る気はない?」と何度も誘っています。

 

伊志井寛さん Wikipediaより

 

川口松太郎さん  Wikipediaより

 

水谷八重子さん(初代) NHKアーカイブス

 

 舟木さんはあまりの熱心さに一度は真剣に考えたようですが、歌手を棄てる選択はしませんでした。しかし、この時、舟木さんの胸中には「先輩たちの歴史が刻み込まれた新橋演舞場の舞台でいつか演じてみたい」という思いを強く抱くようになったようです。舟木さんはそんな思いを20数年後の1997年8月、新橋演舞場の1か月公演の座長として「野口雨情ものがたり」を演じることになります。思い描いたことを実現する舟木さんの役者としての“執念”さえ感じさせてくれます。

 

新橋演舞場=東京都中央区銀座

 

現在の明治座=東京都中央区日本橋浜町 

 

 

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トラが美月に会うため5年ぶりに椿屋に

 

 115回。美月(岡本綾)は思います。「幹(幸太郎)先生は見抜いていた。私が映画のせかいを忘れられへんことも、晋八君がちゃんばらを捨てられへんことも」。そして、美月も滝乃(大竹しのぶ)が椿屋を片時も忘れていないことに気づいていました。晋八(仁科貴)は幸太郎(佐々木蔵之介)が不意に美月を抱きしめたことを許せず、美月に断ったうえで幸太郎の部屋に乗り込みますが、廊下で立ち聞きしている美月の気配に気づけず、幸太郎に「俺が間違いやった。襖の外の気配も感じられへん殺陣師はあかん」とたしなめられます。

 もみじ(三田篤子)が梓(茂山逸平)が研究で使う友禅の染料を持って久しぶりに椿屋に来ます。美月に「おじいちゃんもお父ちゃんも筆をなめて染料を調節するんです。弟先生は染料がガンに関係してるやないかと言っておられます。お兄ちゃんまでガンになったら思うたら…。弟先生がお帰りになったら渡してくれませんか」と頼みます。美月は愛子(賀来千香子)に託しますが、梓に渡すのを忘れてしまい、帰ってきた梓に怒られます…。

 そんな時、新聞広告にトラこと虎之助(菊池隆則)に似た香港スターの写真が出ます。幸太郎、美月、晋八が幸太郎の部屋でドラマを観ますが、虎之助にあったはずの傷がありません…。

 

 116回。美月と晋八と幸太郎は、テレビで謎の香港スター、タイガー・ウォンが虎之助かどうか確認しますが分かりません。一方、麻生(沢田研二)と考え方の溝が埋まらない滝乃が思い悩んでいると、突然、お寺を離れた雀蓮(三林京子)が訪ねてきて「夕べからトラのことが気になって、一人で抱えているのが辛くて来てしまいました」と言って相談します。滝乃から「クリキン先生(舟木一夫)と会われていますか」と聞かれ、「ちょっと前までは舞台にも出てはりましたんですけど、今はプライドばっかり高こうて、使う方も使えへんなったんやと思います。奥さんももうとっくに亡くなりましたし。あの方ももう71や」と答えます。滝乃から一緒になる気はないのかと言われますが、雀蓮は「静かにひっそりというのがあの方の美学です」。

 

 

 一方、タイガー・ウォンが椿屋を訪ねてきます。美月と晋八、ちょうど帰ってきた幸太郎の前で虎之助であることを名乗ります。虎之介は「5年も経つとすっかり変わってしもうたな」と言って、美月が椿屋の女将になっていたことにも驚きます。虎之助は「ギリギリまでおるから、3泊ほどさせてもらえるか」と美月に頼みます。そんな時、雀蓮が「トラは来てますやろか」と訪ねてきます…。

 

 

 

 

 

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