舟木一夫が“ふれコン”で選んだ曲⑥

花咲く乙女たち

 

―後半に第78回「オードリー」―

 

東京赤坂 氷川神社の茅の輪

 

 本題に入る前に―。6月30日は1年の折り返し点です。この日行われる「夏越の祓(なごしのはらえ)」は、半年分の罪や穢(けが)れを落として上半期を無事に過ごせたことに感謝し、残りの半年の無病息災を祈ります。大晦日に行われる「年越しの祓」とともに大祓の一つです。代表的な行事としては、神社などで行われる「茅(ち)の輪くぐり」があります。茅(ちがや)という草で編んだ輪をくぐると身が清められ、半年を健康に過ごせるといいます。また、人の形を模した紙(形代=かたしろ)に罪や穢れを移して厄祓いする神社もあります。水無月(和菓子)を食べるのも夏越の祓の一環です。夏越の祓を終えると、いよいよ本格的な夏の暑さがやってきます。

 

 

 

 本題に入ります―。舟木一夫さんが2024年6月11日(火)に大阪サンケイホールブリーゼで行った第85回“ふれコン”「遠藤実の世界」の6曲目に選んだのは、舟木さん自身が1964年9月にリリースした「花咲く乙女たち」(作詞・西條八十)でした。この曲は西條さんが「高校三年生」をヒットさせた弟子の作詞家・丘灯至夫さんに「俺にも舟木君の歌を書かせろよ」と話したのを知ったコロムビアのディレクター・栗山章さんを通して生まれました。西條さん72歳、舟木さん19歳の時の作品です。

 

花咲く乙女たち/若き旅情[EPレコード 7inch]

 

 栗山さんは学生時代に日欧の近代文学にはまり、アルチュール・ランボーらを日本に紹介した仏文学者としての西條さんから多くを学んでいましたから、西條さんが舟木さんの歌を書きたいと知った時は一刻も早く会って話がしたいと思ったに違いないと思います。栗山さんが舟木さんを連れて東京・成城の西條宅を訪ねたのは1964年5月某日のことでした。栗山さんは古い玉突き台が見える古風な応接間に通された時には、異常な緊張で震えてしまったということです。  

 

 

 栗山さんの緊張感も知らず、舟木さんは会うなり「先生、ここ数年余りお仕事をなさってないのは、どうしてですか」。西條さんは笑って「うん、仕事をしてお金を稼いでも使ってくれる人がいなくなっちゃったから」。舟木さんが「はぁ…」と怪訝な顔をするのを見て、「僕の奥さんが最近亡くなってね。僕の奥さんは大変な浪費家で、稼いできたものを湯水のように使ってくれた。その人が亡くなってから、仕事をしてもお金が溜まるばかりなんだ。これはつまらないことだよ」と話しました。

 

 

 そんなやり取りがあった後、栗山さんが書店で見かけたマルセル・プルーストの小説「花咲く乙女たちのかげに」を参考に、「花咲く乙女たち」というタイトルを西條さんに提案しました。西條さんも納得し、「花咲く乙女たち」で街行く乙女たちを「カトレア」や「鈴蘭」、「忘れな草」 などの花々に見立て、自分が若い頃は舟木君のように女性の憧れの的で、書斎が贈り物の花束でいっぱいだったが、彼女たちも花のようにいつか散ってしまう…。そんな思いを綴りました。

 

失われた時を求めて(3) 第2篇 花咲く乙女たちのかげに 1

 

 西條さん作詞の歌に1964年1月にリリースされた「さあさ踊ろよ」(作曲・市川昭介)という曲がありますが、これは舟木さんのほか、青山和子さん、草野士郎さん、二代目コロムビア・ローズさん、本間千代子さんの5人が一緒に歌ったもので、西條さんが舟木さん一人のために書いたものではありませんでした。その意味でも、「花咲く乙女たち」は弟子の丘さんが作詞した「まだみぬ君を恋うる歌」(作曲・山路進一)に続く“恋愛歌”になりました。

 

 

 遠藤さんは“雲の上の師匠”である西條さんの「花咲く乙女たち」の中に「どうしても、ここはこうしたいという箇所があった」ため、言い出せないまま勝手に直してレコーディングしました。相当怒られると覚悟していましたが、何も言いませんでした。遠藤さんは「よりいい作品にしたいという私の一心が通じたのだろうが、そんな先生の度量に私は頭の下がる思いがした」と著書に記しています。残念ながら、私は遠藤さんがどの部分を直したのか存じ上げません。

 

 

 西條さんは以前から「花物語」「悲しき草笛」「夕月乙女」などの少女小説シリーズのほか、1936年には自ら作詞した歌謡曲「花言葉の唄」(作曲・池田不二男、歌・伏見信子&松平晃)をヒットさせています。舟木さんも好きだったようで、2014年12月にリリースされたアルバム「トップスター昭和名曲大全集戦線編1」の中でこの歌を歌っています。西條さんがその後、「絶唱」(作曲・市川昭介)などを書いて亡くなったのは78歳ですから、舟木さんとの出会いは最晩年ということになりますね。

 

 

 

 

 

 

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黒田は「若侍七変化」のリメイクを選択

 

 78回。雀蓮(三林京子)のお告げは「怖い絵はあきまへん。昔の絵を描きなはれ」。黒田(國村隼)は「若侍七変化」をリメイクすると決めます。杉本(堺雅人)は錠島(長嶋一茂)は若侍は無理と反対しますが、黒田は「台本を書き直せ」と譲らず、椿屋に脚本の岩本(朝倉伸二)たちを集めて、台本を書き直します。そんな夜中に泰子(内田直)が泣きながら駆け込みます。酒乱の夫・彰(戸田都康)に我慢できず離婚すると言い出します。

 

 「俺には“若侍”は出来ない」と言っていた錠島も主役として加わり撮影が始まりました。美月(岡本綾)もエキストラで参加。殺陣は古く、錠島に若侍の設定は無理があり、白けた雰囲気で撮影が進みます…。

 

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舟木一夫2024年コンサートスケジュール

 

 

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☆青春賛歌 目次【2】2023年1月~

☆青春賛歌目次【3】2024年1月~