舟木一夫が“ふれコン”で選んだ曲⑤

星影のワルツ

 

―後半に第77回「オードリー」―

 

 

  本題に入る前に―。灰色がかった明るく美しい紫の「葵色(あおいいろ)」。平安の頃からの伝統色です。初夏に天に向かって真っすぐに伸びた茎の下に大きな花を咲かせる「立葵(たちあおい)」が色名の由来です。梅雨の頃に花を咲かせることから「梅雨葵(つゆあおい)」とも呼ばれ、雨の季節に心を明るくしてくれます。葵という名を聞くと、徳川家の家紋「丸に三つ葉葵」を思い浮かべますが、この波紋は葉がハート型の「フタバアオイ」で、地面のすぐ近くにうつむいて小さな花を咲かせる別の植物ということです。

 

江ノ口川堤防に咲くタチアオイ=高知県高知市

 

 

 本題に入ります―。舟木一夫さんが2024年6月11日(火)に大阪サンケイホールブリーゼで行った第85回“ふれコン”「遠藤実の世界」で5曲目に選んだのは、千昌夫さんが1966年3月24日にリリースした「星影のワルツ」(作詞・白鳥園枝)でした。作詞した白鳥さんは戦前に民衆派詩人として活躍した白鳥省吾さんの次女で、田端義夫&西崎緑さんの「さよなら船」や島津ゆたかさんの「花から花へと」なども作詞しています。遠藤さんの作品には“物語”があるものが多く、「星影のワルツ」にも興味深い裏話があります。

 

 

 千さんは1947年4月8日、岩手県陸前高田市の出身。高校2年の時に退学して上京し、遠藤さんに弟子入り志願してきたたため、遠藤さんは「仕方なく家に住まわせた」と言います。遠藤さんの前で歌った舟木さんの「高校三年生」は「いったいどこの民謡だ」(遠藤さん)というものでしたが、遠藤さんは「いつか一人前の歌手にしてやりたい」と思って、「君が好き」(作詞・若山かほる)という曲を書いて1965年9月5日にデビューさせました。残念ながらヒットしませんでした。

 


 

 遠藤さんは自ら作詞&作曲した第三弾の「君ひとり」を作りましたが、B面候補の作品がありません。そこへミノルフォン第二制作部長が持ってきた、福島県相馬市に本拠を置く作詞の同人誌「こけし人形」に白鳥園枝作詞「辛いな」という四行詩が載っていました。遠藤さんは明星楽団の一員として吹雪の中の夜に見上げた空の星の輝きを思い出し、「別れに星影のワルツを歌おう」と書き足しました。そして、歌詞のタイトルを「星影のワルツ」と改題して1966年にリリースしました。

 

 

 これもヒットせず、将来を悲観した千さんの怒りが遠藤さんにも向いたため、遠藤さんは家から追い出します。千さんは何度も詫びを入れに来ますが、遠藤さんは決して会いませんでした。ある時、特約店を回る途中に岡山のナイトクラブに立ち寄ったところ、店の女性たちがジュークボックスに硬貨を入れて何度も同じ曲をかけていました。「星影のワルツ」でした。遠藤さんが「そんなにいい歌?」と聞くと、女性の一人が「聴けば聞くほど胸が締め付けられる」としみじみと話しました。

 

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 遠藤さんは「この曲でもう一度勝負しよう」と決め、千さんも許して、アレンジを変えて吹き込み直しました。千さんの歌唱には甘えが抜けて表現に力があったといいます。この曲は発表から2年後の1968年3月にA面に移しジャケットも一新して再発売されました。千さんは曲名を書いた段ボールを体の前後に下げ、街のにぎわいの中で歌い続けました。その頃流行り始めた有線放送に電話して自分の曲をリクエストするために、ポケットの中ではいつも10円玉がジャラジャラ鳴っていたといいます。

 

 創設間もないオリコンのシングルチャートでは、1968年4月29日付で8位に入り、6月3日付でザ・タイガースの「花の首飾り」を抑えて首位を獲得。その週のトップ10にはザ・テンプターズの「神様お願い!」やザ・ワイルド・ワンズの「バラの恋人」などがひしめいていました。一時、ザ・テンプターズの「エメラルドの伝説」に抜かれますが、8月19日付で1位に返り咲き、10月7日付まで24週にわたってトップ10をキープしました。結局、1968年の年間1位、公称200万枚を売り上げました。

 

 

 千さんはこの「星影のワルツ」で同年の第19回NHK紅白歌合戦に初出場しました。ちなみに、千さんは紅白歌合戦に計16回出場していますが、このうち「北国の春」を計6回歌い、「星影のワルツ」は初出場時の1回だけでした。

 

 

 

 下は舟木さんコンサート活動を応援している㈱アイエスのX(旧ツイッター)です。

 

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放送を見て殺人未遂事件が発生

 

 77回。「惨殺浪人・夢死郎」の最終回が放送されましたが、放送を見ていたら浮気していた内縁の妻を殺したくなったという殺人未遂事件が起きて騒ぎになります。黒田(國村隼)は記者会見を開き、「事件に番組は無関係で責任などない」と強調しますが、それが世間の反感を買ってスポンサーが降りると言ってきます。大京映画の黒田以下役員たちは椿屋で作戦会議を開きますが、記者たちが押しかけてきたため、黒田は女装して美月(岡本綾)を連れて逃げ出し、雀蓮(三林京子)の元へ。雀蓮は「昔の絵を描きなはれ」と告げますが…。 

 

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☆青春賛歌 目次【1】2022年6月~

☆青春賛歌 目次【2】2023年1月~