東京・小石川後楽園の花菖蒲

 

舟木一夫が“ふれコン”で選んだ曲④

からたち日記

 

―後半に第75回・76回「オードリー」―

 

 本題に入る前に―。七十二候では6月26日から29候の「菖蒲華(あやめはなさく)」が始まり、二十四節気では「夏至」の次候になります。花菖蒲(はなしょうぶ)の洗練された花が美しく咲く頃です。“あやめ”という表現になっていますが、アヤメ科の花の中でこの時期に花を咲かせることから、花菖蒲を指しています。花菖蒲は優雅な色彩と容姿から梅雨時の沈みがちな空気を一変させてくれます。端午の節句に使われるショウブはサトイモ科の植物で、茎葉に芳香があり刀のように鋭い葉には邪気を払う力があるとされ、お風呂に入れて入る“菖蒲湯”の風習があります。

 

 

 

 本題に入ります―。舟木一夫さんが2024年6月11日(火)に大阪サンケイホールブリーゼで行った第85回“ふれコン”「遠藤実の世界」で4番目に選んだ曲は、島倉千代子さんが20歳の1958年(SP盤は10月、EP盤は11月)にリリースした「からたち日記」(作詞・西沢爽)でした。台詞入りの歌はヒットしないと言われていたジンクスを破って、130万枚を売る大ヒット曲になりました。島倉さんの代表曲の一つです。翌年4月14日には自身も出演した同名の松竹映画(監督・五所平之助)が公開されています。

 

K00042433/SP/島倉千代子「からたち日記/待ち呆けさん (1958年・A-3092)」K00042433/SP/島倉千代子「からたち日記/待ち呆けさん (1958年・A-3092)」

 

松竹データーベースより

 

 島倉さんはこの曲がリリースされた年末の第9回NHK紅白歌合戦に出場して「からたち日記」を歌ったのをはじめ、紅組トリを務めた1973年の第24回、1984年の第35回でも歌いました。2013年12月18日には島倉さんの遺作「からたちの小径」(作詞・喜多條忠&南こうせつ、作曲・南こうせつ)もリリースされています。こうせつさんが「からたち日記」の時の可愛らしい島倉さんのイメージを元にタイトルを付けたといいます。島倉さんが75歳で亡くなる3日前にレコーディングしたものです。

 

からたちの小径

 

 

 

 遠藤さんは、自伝「涙の川を渉るとき」(日本経済出版)の中で、「からたち日記」の誕生時のことを詳しく記しています。それによると、コロムビア文芸部のディレクター・馬渕玄三さんに呼ばれて東京・銀座は並木通りの喫茶店で会った際、「島倉千代子が不調で復活させたい。彼女のために曲を書いて下さい」と頼まれます。馬渕さんが差し出した紙には「西沢爽作詞『からたち日記』」と書いてありました。マーキュリーにいた遠藤さんはチャンスだと思って曲を作ります。

 

涙の川を渉るとき: 遠藤実自伝

 

 最初に短調のメロディーを書きますが、しっくりこなくて長調のものも作ります。両方を音楽記者と馬渕さんに比べてもらっても判断できず、結局、島倉さんに決めてもらおうということになりました。島倉さんの家で待っていると、NHKに出演したままの衣装で駆け込んできたので、遠藤さんは両方のメロディーをピアノで弾いて聞いてもらいました。島倉さんは「長調の曲は『さああけんでも』という変拍子のところが難しい。こんな歌は初めて。是非難しい方に決めて下さい」と言ったそうです。

 

 島倉さんご本人もこの時の様子を「島倉家」(文芸社)の中で書いています。島倉さんによると、二つの「からたち日記」を歌わされて「どっちを歌うか、お千代が決めろ」と言われ、「私には決められません』と言うと、「今すぐ決めろ」と迫られ、「これまでの島倉千代子と違うものを歌ってみたい」と言って長調の曲を選びました。「遠藤先生は短調の方を選ぶと思っておられたようで驚ろかれていました。本当に責任重大な決断だったんだなあと思いました」と記しています。

 

 遠藤さんはマーキュリーとの専属契約が残っていたため、遠藤実の名前は使えず、「米田信一」というペンネームを使いました。「からたち日記」は発売と同時に大ヒット。“島倉復活”に成功した馬渕さんは実力を認められ、演歌・歌謡曲の名プロデューサーへとひた走り、五木寛之さんの小説「艶歌」と「海峡物語」の主人公「艶(演)歌の竜」のモデルとして描かれます。遠藤さんも間もなく、念願だったコロムビアの専属作家に。たった一つの曲が同時に3人の人生を決めることになりました。

 

艶歌・海峡物語

 

 

 

からたち日記

 


 

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美月が樹里のわがままで付き人に…

 

  75回。「夢死郎」の残酷表現が新聞記事になり、慌てる関川(石井正則)に手本を見せると黒田(國村隼)は記者会見を開き、自信満々に「新聞記事はごく少数の意見を取り上げ、ことさら大きく見せている」とまくしたて、第二シリーズの宣伝をします。錠島(長嶋一茂)の恋人と記事になった樹里(井元由香)は錠島の付き人にまで口を出し、錠島の付き人は青葉城虎之助(菊池隆則)、自分の付き人は美月(岡本綾)にしないと出ないと言って実現させます。樹里はセットで、付き人の美月に衣装などの指示を出します…。

 

  76回。樹里は付き人の美月の前で、錠島に話があると言って楽屋に入ります。樹里は誘いますが、錠島は相手にしません。衣裳部屋で耐えきれずに泣く美月に、そっとハンカチを出す晋八(仁科貴)。一方、梓(芝山逸平)の模試の成績が悪いのを知って驚く愛子(賀来千香子)と春夫(段田安則)。愛子が心配して梓に話しかけると、梓は今さら気にするなと拒絶します。

 

 晋八は錠島に手紙を渡しセットに呼び出し、木刀を渡します。呼び出した理由を「美月のことや。利用するだけ利用して用がなくなったらポイや。ワイが変わって成敗してくれるわ」とやり合います。最後は錠島に斬られますが、錠島に「晋八、大丈夫か」と声をかけられると、晋八は「今の間をよう覚えとけよ。ワイが欲しいのは今の間や」。二人の“喧嘩”を見ていた美月は錠島の目を見つめます…。 

 

 

 

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☆青春賛歌 目次【1】2022年6月~

☆青春賛歌 目次【2】2023年1月~

☆青春賛歌目次【3】2024年1月~