舟木一夫が“ふれコン”で選んだ曲②

みちづれ

 

―後半に第70回・71回「オードリー」―

 

 本題に入る前に―。七十二候で「乃東枯(なつかれくさかるる)」の時期、つまり梅雨の頃に雨の中で美しく咲く花を、総称して「雨降花」「雨降り花」と呼びます。シロツメクサ、ヒルガオ、ギボウシ、ホタルブクロ、ツリガネソウなど。その花を摘むと雨が降るとか、その花が咲くと雨が降るなどと言われています。「乃東」が指すとされるウツボグサもその一つですが、毎年冬至の頃に芽を出し、梅雨時に紫色の花を咲かせます。夏至を迎えると、残った花穂が枯れたように褐色になることから「夏枯草(なつかれくさ)」という別名も付きました。渡哲也さんや大石円さんの歌にも「雨降り花」があります。

 

ウツボグサ

 

 

 本題に入ります―。舟木一夫さんが2024年6月11日(火)に大阪サンケイホールブリーゼで行ったふれんどコンサート(ふれコン)「遠藤実の世界」で2曲目に選んだのは、牧村三枝子さんが1978年10月21日にリリースした「みちづれ」(作詞・水木かおる)でした。東京のふれコンまでに全曲の紹介を終えることは難しいので、何曲かは“復習”になると思います。ともあれ、今回は牧村さんの「みちづれ」を綴ります。歌を通して遠藤さんという作曲家も浮き彫りにしていきたいと思っています。

 

EPレコード【みちづれ/牧村三枝子】

 

 牧村さんは1953年12月21日、北海道美唄市で炭鉱労働者の家庭で5人兄弟の末っ子として生まれました。中学卒業後に上京し、釣り具店に就職する傍ら、1972年7月25日にサンミュージック・タレントスクールを経て、「少女は大人になりました」でRCAレコードからデビューしました。18歳でした。1976年1月から日本テレビ系で放送された渡哲也さん主演の「大都会-闘いの日々-」にレギュラー出演。3月にポリドール・レコードに移籍し、「大都会」の挿入歌「赤提灯の女」をリリースしました。

 

◎ 牧村三枝子 [ 赤提灯の女/雨の酒場 ] 未使用 EP アナログ レコード サービス

 

 そして、ポリドールの先輩歌手・渡哲也さんが1975年11月21日にリリースした「みちづれ」を聴いた牧村さんのディレクターが牧村さんに「この曲を歌ってみないか」と勧めると、牧村さんはテープを持ち帰って聴き「是非歌わせてください」と返事。渡さんは快く承諾してくれました。1978年の秋、遠藤さんがレコーディングに立ち合うと、牧村さんが「♪寒い夜更けは お酒を買って…のところが歌いづらいので一音さげていただけないでしょうか」と訴えたといいます。

 

 遠藤さんは「楽に歌ってはダメ。歌い終わって『よかった。歌えた』という思いをしないと聴く人の心には届かない」と伝え、牧村さんは思い直してマイクの前に立ちましたが、思うほど売れませんでした。それを聞いた渡さんは「みちづれ」歌わないようにすると売れ始めました。オリコン週間シングルチャートで1979年4月30日付から38週連続で20位以内にチャートインします。牧村さんは1981年の第32回NHK紅白歌合戦に初出場して「みちづれ」を歌い、4年連続で紅白歌合戦出場を果たしました。

 

 

 牧村さんは1997年、44歳の時に父親が亡くなり酒量が増えたことなどが原因で、2002年頃に肝硬変と食道静脈瘤を発病して約2年間の闘病生活を体験しました。2023年5月15日に放送されたテレビ朝日系「徹子の部屋」に出演し、乳がんの闘病を極秘にし10年前に両胸を全摘出したことや、自宅マンションを売却し大量の着物などの衣装も処分して兄や甥らの親族が住んでいる静岡市に移住したことなどを明かしました。これにはかなり驚きましたね。

 

 遠藤さんは「みちづれ」が渡さんの歌で最初にリリースされた1975年前後には、森昌子さんの「おかあさん」(作詞・神坂薫)、美空ひばりさんの「ひとりぼっち」(作詞・山口洋子)、同じく「雑草の歌」(作詞・加藤和枝)、藤圭子さんの「さすらい」(作詞・よしかわかおり)、同じく「風子二十四不幸せ」(作詞・島田幸一)、三橋美智也さんの「悲恋草」(作詞・杉紀彦)、同じく「たそがれたずねびと」(同)などを作曲しています。

 

 渡さんは遠藤さんが2008年12月6日に亡くなったのを受けて次のように語っています。「もともと歌には興味がありませんでしたので、『くちなしの花』の話を受けた時は戸惑いました。なかなか前向きになれませんでしたが、遠藤さんとお会いしてから考えが変わりました。ピアノを弾きながら昔を思い出して目に涙を浮かべてるんです。ある時、間奏は何のためにあるか分かるかと聞かれました。詞に書いてある情景を思い浮かべるためだと。歌うのではなく語ればいいんだと言われました」。

 

 

 渡さんが1974年にNHKの大河ドラマ「勝海舟」に主演した際、40度近い高熱が続いて途中降板せざるを得なくなり、静岡・熱海の病院に入院しましたが、その時、遠藤さんが見舞いに訪れ、「自分の腕を叩きながら“自分の細胞に勝て”“己に勝て”」と告げられました。とにかく歌謡界の大御所が遠路はるばる熱海まで来てくれて驚いたという渡さんは、遠藤さんから「歌は心で歌うこと」と「己に勝つことの大切さ」を学んだと言います。遠藤さんを師と仰ぐ渡さんのような“歌手”も少なくありません。

 

大河ドラマ「勝海舟」 NHKアーカイブスより

 

 

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錠島が美月に「説教するな!」と激昂

 

 70回。樹里(井元由香)が10月から始まるドラマ「ポケットえりかちゃん」の主役として関東テレビで紹介されました。黒田(國村隼)と関川(石井正則)の間で、錠島(長嶋一茂)と樹里を大京映画所属の役者として売り出そうと盛り上がり、錠島の体裁を整えておくため、家具付きマンションに引っ越しさせたり、毎日日替わりで大部屋俳優を付き人につけたりします。美月(岡本綾)は錠島から何も知らされませんが、晋八(仁科貴)からマンションの住所と電話番号を聞きます…。

 

  71回。美月(岡本綾)は錠島(長嶋一茂)のマンションに電話してみますが、錠島は出ません。錠島は元のアパートの部屋で台本を読んでいました。翌日、錠島と樹里(井元由香)の記者会見が開かれ、広報で愛想を振りまけない錠島は、インタビュアーの質問にもつっけんどんに返事して、関川(石井正則)が慌ててフォローします。気になった美月は錠島に電話すると、錠島は「説教するな!」と激昂します。錠島は翌日の撮影をすっぽかし、アパートに駆け付けた美月に「俺の不安は俺にしか分からない」と言います。美月は「錠島さんの才能がすきなんやと思うけど、もう疲れたかもしれん。明日8時に撮影開始やけど、好きにして」と突き放します…。

 

 

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舟木一夫2024年コンサートスケジュール

 

 

☆青春賛歌 目次【1】2022年6月~

☆青春賛歌 目次【2】2023年1月~

☆青春賛歌目次【3】2024年1月~