舟木一夫が神野美伽と歌った「旅の夜風」

~大阪・新歌舞伎座でのジョイントコンサート~

 

―後半に第48回「オードリー」―

 

 

 本題に入る前に―。七十二候では紅花(べにばな)が咲き乱れる頃とされている「紅花栄(べにばなさかう)」。紅花は染料としてよく使われます。咲き始めは黄色く、次第に赤色が増して濃い紅に変化します。紅花の産地としても有名な山形県の県花になっています。収穫は畑一面にオレンジ色や黄色の花が咲き誇る夏、染色は冬に行われます。茎の末端に咲く花を摘み取ることから“末摘花(すえつむはな)”とも呼ばれ、「万葉集」にも出てきます。染料の「紅餅(べにもち)」を作るまでの工程が大変で、早朝に紅花摘み、しかも開花時期が長くないため大忙し。摘み取った花から黄色い色素を抜いた後、発酵させ最後に天日干するという手間がかかります。

 

 

◇   

 

 

 本題に入ります―。大阪・新歌舞伎座で5月2日から8日まで行われた「舟木一夫&神野美伽ジョイントコンサート」で二人がデュエットされた曲のうち、まず1938(昭和13)年9月10日に「悲しき子守唄」(作詞・西條八十、作曲・竹岡信幸)とのカップリングでコロムビアレコードから発売された「旅の夜風」(作詞・西條八十、作曲・万城目正)について綴ってみたいと思います。

 

 

 「旅の夜風」は霧島昇とミス・コロムビア(松原操)のデュエット、「悲しき子守唄」はミス・コロムビア一人で歌っています。「旅の夜風」が誕生したのは、1937年から1938年まで雑誌「婦人倶楽部」に連載された川口松太郎の小説「愛染かつら」の映画化が決まった時、川口が小説のヒントを西條八十の「母の愛」という詩からヒントを得たため、西條が映画の主題歌を作詞することを要望したと言われています。

 

(左)上原謙(右)田中絹代、1938年「愛染かつら」Wikipediaより

 

 松竹映画「愛染かつら 前篇・後篇」(監督・野村浩将)は田中絹代(=高石かつ枝)と上原謙(=津村浩三)が主演して1938年9月15日に公開されたのに続き、翌年には「続愛染かつら」に続いて「愛染かつら 完結篇」も公開されています。津村病院の院長の令息・浩三が、自分のピアノ伴奏に合わせて歌った23歳の美貌の看護婦・高石かつ枝に一目ぼれしますが、彼女には若くして死別した夫との間に6歳になる娘がいて…。

 

旅の夜風

 

 「旅の夜風」は発売1年間で売り上げ120万枚(80万枚とも)を超え、日本のレコード史上初めてのミリオンセラーになりました。これが縁結びとなって、霧島(当時24歳)は発売翌年にミス・コロムビアこと松原操(当時27歳)と結婚しました。その後も代表曲になる「誰か故郷を想わざる」(作詞・西條八十、作曲・古賀政男)などのヒット作を連発して“コロムビアのドル箱”と呼ばれました。

♭♭♭EPレコード 霧島昇 誰か故郷を想わざる/三百六十五夜

 

 

旅の夜風

 

 

 神野さんによると、この歌をデュエットする案は舟木さんから持ち出され、男と女が一緒に歌った日本で最初の歌だと思うという説明をしてもらった。そして「『旅の夜風』は知っている歌でしたけど、改めて聴くと何ていい曲なんだろう、なんて綺麗な日本語だろうと。私が歌い出す2番にあります♪発たせまつりし 旅の空…の“発たせまつりし”という女性から男性に対する尊敬も込められた綺麗な日本語。こういう日本語をもう日常聞くことがないですよね。メロディーもアレンジも本当に良く出来ていて、舟木さんがこの歌を大好きなんだっていうの分かります」と話しています。

 

 

 

 ちなみに、オリジナルの3番の歌詞には「加茂の河原に秋長けて 肌に夜風が沁みる」という箇所があったのを、霧島がテストでも本番でも「肌に夜風が沁みわたる」と歌い、レコーディングに立ち合っていた西條が渋々認めたため、そのまま定着したといいます。もっとも、戦後に藤原良と高石かつ枝がカバーした際、藤原がオリジナルの歌詞で歌ったところ、ファンからコロムビアに「歌詞を間違えている」というクレームが殺到し、霧島と同じように歌うことになったそうです。

 

 

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 下は神野美伽さんが25日(土)にUPされたオフィシャルブログです。

   早起きして見ました。長山洋子さんから「他にやりたいジャンルは?」と聞かれ、神野さんは「やり尽くしたんですけど、今回の新曲のように、まだまだ自分が気づいていないことを(他)人がピックアップしてくれたり見つけ出してくれたりするんですね」と話し、新曲「天の意のまま」(作詞・荒木とよひさ、作曲・弦哲也)については「年明けに大きな地震で亡くなったり、先輩が急に亡くなったりで、人の命って何だろうと思っていた時に荒木先生が作ってくださいました。今生きることは何なんだと考えて歌っています」と語っていました。

 

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錠島はダメだと言われても美月は「好きです」

 

 48回。杉本(堺雅人)は美月(岡本綾)に「僕ら映画屋はテレビをバカにしていた。電気紙芝居だと軽蔑していた。そんな驕りが映画をダメにした。君が評価した木枯し紋次郎は大映の映画屋がテレビに挑戦する形で始まったんだ。大映の伝統と意気込みがマッチングして、あの傑作が生まれたんだ。大京が置かれている立場とよく似ている。僕が引き受けたのは、テレビだからこそ挑戦できる可能性があると思ったからだ。ジョー(長嶋一茂)のこと、どう思う? 無謀な冒険かもしれない」と話すと、美月は「そしたら、何で錠島さんを主役に?」。

 

 杉本は「これも挑戦の一つなんだ。ジョーに才能があったにしても、生かすも殺すも企画次第。役者は実力や魅力だけじゃなく、その役が役者を育てる。ジョーは天涯孤独なんだよな」と聞くと、美月は「錠島さんは親の愛情知らんから、ちっちゃい時から人を信じることが出来へんようになったんや」。杉本は「そのままキャラクターになるかもしれない」と言うと、美月は「錠島さんはいつも一人、群れを成さない。その孤独感が魅力やと思います。けど、どっか暖かい」と答えますと言うと、杉本から「ジョーに会いに行こう。もっと知りたいんだ」と話し、美月の案内で錠島のアパートに向かいます。

 

 愛子(賀来千香子)は滝乃(大竹しのぶ)に興信所の調査結果の手紙を見せてもらい、「横浜で親に捨てられ、施設に入れられ、最後は神戸の少年院。でも、食料の窃盗、毛布や布団の窃盗。良かった、そんな凶悪な犯罪じゃないわ」というと、滝乃は「良かったって、あんた」。愛子はさらに読み続けます。「古井君(本名)は少年院の教官には反抗的でしたが、頭のいいスジの通った少年でした。18歳で大京映画のニューフェイスに応募して合格。主役に抜擢されましたが、映画界の斜陽化の流れの中で作品はお蔵入り。今は大部屋の斬られ役だと聞いています」。

 

 佐々木家では春夫(段田安則)が愛子に「(興信所の件を)何で僕に言うてくれんかったんや」と怒ると、愛子は「パパに言うと一大事になると思ったのよ。映画のラブシーンも嫌だと言ったのよ。じゃあ、パパはどうしたらええと思うの」。春夫は「まだ未成年や。どんな人間か会ってみる」と言って、二人で興信所に書いてあるアパートに向かい、愛子は驚きます。「ここは梓(茂山逸平)のアパートだわ。それで美月は梓に毎日、食料届けてたのかしら」言うと、春夫は「どういうこっちゃ」。

 

 錠島の部屋の前まで来ると、中から錠島が大部屋女優の二階堂樹里(井元由香)に「二度と来るな」と言って追い返そうとしています。春夫が「こいつか」と言うと、愛子は「先日はどうも」。樹里は名前を名乗って「ジョーの(と言いながら小指を立てる)」。春夫は錠島に「君はウチのオードリーの恋人やないんか。お前はウチのオードリー、何やと思うてんねん」と怒ると、隣の部屋から「やっぱり」と言って梓が出てきます。春夫は錠島に「お前、オードリーをもて遊んだな。お前のような奴にウチのオードリー、渡さへん」と言うと、杉本と美月が現れます。春夫は美月に「オードリー、何やこの男は。真面目に女優の修行してると思うてたら」。杉本が「誤解です。僕は…」言いかけると、愛子が「このは方は大京映画の監督さんよ」と教えます。

 

 家に帰った美月は春夫に「私の人生、邪魔せんといて」と言うと、愛子は「そんな言い方、よしなさい」。滝乃が「あの男の正体は椿屋に来た時からお母ちゃまには見えてた」と言うと、美月は「誰にも気に入られんかって、私、あの人のことが好き。錠島さんは私が変えてみせる」。滝乃は「これ読んでみいよし」と言って、美月に興信所の調査書を渡します。春夫は「あの男はあかん。女にだらしない男は金にもだらしない。役者としての才能があっても、オードリーを幸せにする才能はない」と言うと、愛子も「さすがに今日はそう思ったわ」。

 

 美月は「私もそう思うことはある。けど、理屈で割り切れへんのが人生やない。恋することかって、そやないの。ママは私が椿屋で育てられることに、もっと必死で抵抗せえへんかったん。お母ちゃまも人を好きになったことないの。独りで椿屋を守ることが 使命や言うてるけど、ほんまにそれだけで幸せやの」と言うと、春夫が「オードリーを3人で育てよ言うたんはパパや」と口を挟みますが、美月は「パパはお母ちゃまのこと、どう思うてんの。パパはなんで椿屋の隣りに住んでんの。お母ちゃまとパパは恋愛したんと違うの」と畳みかけます。もう、誰も無言のままです…。 

 

 

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☆青春賛歌 目次【1】2022年6月~

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