舟木一夫~2024年コンサート曲㉔

あゝ青春の胸の血は

―後半に「オードリー」の話題も―

 

 

 本題に入る前に―。ドイツ出身のアメリカの詩人、サミュエル・ウルマンの「青春」という詩の中に「青春とは人生のある期間ではなく、心の持ち方をいう。薔薇の面差し、紅の唇、しなやかな手足ではなく、たくましい遺志、豊かな想像力、燃える情熱をさす。青春とは人生の深い泉の清新さをいう」とあります。松下幸之助さんは、これにヒントを得て1970年に自ら「青春とは心の若さである」という言葉を作り、座右の銘にしていました。古代中国の陰陽五行思想では「春」には「青(緑)」があてられるなど、四季を「青春」「朱夏」「白秋」「玄冬」としています。年齢に置き換えると、「春」は15歳から29歳、「冬」は65歳以降です。夏目漱石の「三四郎」 は熊本から東京の大学に入学した小川三四郎の物語ですが、若さゆえに情熱に溢れる様子を「考えるには青春の血が、あまりに暖かすぎる」と表現しています。若者の焦りや葛藤を表現する言葉が随所に出てくる“青春小説”です。

 

 

 

あゝ青春の胸の血は [EPレコード 7inch]

 

 この流れに乗って、本題に入ります―。舟木一夫さんが2024年通常コンサートの24曲目に選んだのは、1964年1月にリリースした「あゝ青春の胸の血は」(作詞・西沢爽、作曲・遠藤実、編曲・福田正)でした。以前にも書きましたが、デビュー2年目の1964年はシングル15枚とアルバム2枚を出していますから、新譜が届いてからレコーディングまで約1週間という慌ただしさでした。ともあれ、この「あゝ青春の胸の血は」は“青春歌謡の最高峰”で、コンサートには欠かせない曲になっています。

 

 舟木さんの曲の中で、「あゝ青春の胸の血に」以外でタイトルに「青春」が出てくるシングル曲をリリース順にピックアップしてみると―。「青春はぼくらのもの」(作詞・丘灯至夫、作曲・遠藤実)、「青春の大阪」(作詞・西沢爽、作曲・和田香苗)、「青春の鐘」(作詞・丘灯至夫、作曲・古関裕而)、「青春」(作詞・丘灯至夫、作曲・遠藤実)、「青春ばなし」(作詞&作曲・上田成幸)、「眠らない青春」(作詞・舟木一夫、作曲・川崎浩史)。全部で7曲でした。意外に少ないんですね。

 

青春の大阪 (クラシックCD付)

 

 「あゝ青春の胸の血は」を“青春歌謡の最高峰”と呼ぶのは、西沢爽さんの“作詞の力”が大きいです。西沢さんは、舟木さんの曲では他に、リリース順に「仲間たち」「はるかなる山」「美しい人」「夕月の乙女」「青春の大阪」「右衛門七節」「あゝりんどうの花咲けど」「待っている人」「ふるさとの乙女」「おもいをこめて手をふろう」「朝日音頭」「北風のビギン」「ああ!!桜田門」「恋のお江戸の歌げんか」「寝顔」など数多くあります。

 

 舟木さんの曲以外では、美空ひばりさんの「ひばりの佐渡情話」、島倉千代子さんの「からたち日記」もありますが、舟木さんは「ひばりの佐渡情話」を2016年7月25日の東京・新橋演舞場でのシアターコンサート「美空ひばりスペシャル~ひばりが翔んだ日々~」で、「からたち日記」は同じ劇場で2014年5月31日に行われたシアターコンサート「遠藤実スペシャル~七回忌に偲ぶ~」で歌っています。ちなみに、西沢さんは作詞活動をやめた後、中世以降の歌謡曲研究に専念されました。

 

シアターコンサート2016 ヒットパレード/美空ひばりスペシャル -ひばりが翔んだ日々- [DVD](未使用品) (shin

 

シアターコンサート2014 ヒットパレード/遠藤実スペシャル~七回忌に偲ぶ~ [DVD](未使用品) (shin

 

 「あゝ青春の胸の血は」の歌詞を見ると、一番の歌い出しに「溢れる若さ あればこそ」があり、「未来に向かい われら立つ」と続きます。そして、「生命の歌声に」「夢ひとすじに燃える」。二番は一転して「親しき友の かなしみを」から始まり、「励ます言葉 尽きるとも」「光れ銀河よ 友情の」などと“友情の重み”を歌い、三番では「瞼にあわき 花すみれ」から始まり、「ゆきずりの君 今いずこ」「虹は消えても 若き日の」などと“過去の恋愛=純愛”がテーマになります。

 

あゝ青春の胸の血は

 

 

 西沢さんがこの曲の作詞をされたのは45歳の時です。55歳の時に休筆宣言されて作詞活動をやめた後には「日本近代歌謡史」や「雑学歌謡昭和史」など多くの著作を発表し、1989年には「日本近代歌謡の実証的研究」で國學院大學で文学博士号も取得しています。「あゝ青春の胸の血は」のころからは並行して歌謡曲の本格的な研究も始めておられたと思います。三番の歌詞に「あわき」や「はかなき」、「忘るまじ」など格調のある文語体が自然に埋め込まれているのもその証左ではないでしょうか。

 

 

 

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第12回も観てしまいました

 

 滝乃(大竹しのぶ)と別々の部屋に寝ていた美月(大橋梓)は悪夢を見て怖くなり、隣室の滝乃の部屋の滝乃に抱き着き一緒に寝る。美月のことが心配で眠れなかった愛子(賀来千香子)が様子を見に行くが、滝乃に抱き着いて寝ている美月を見てショックを受ける。この辺が大石静さんの脚本の真骨頂なんですが…。 

 

 翌日、君江(藤山直美)とお茶の稽古に出かけた美月は、大京映画の撮影所の前で君江を振り切って所内に駆け込む。大京映画のスタッフ・杉本英記(堺雅人)が慌てて君江と美月の所に駆け寄り、「子役の女の子が急に倒れた。代わりに出てもらえませんか」。ナレーション「これが君ちゃんと杉本の出会いだった」。堺さん、若い!!

 

 本番。君江と美月が路上で風車を売っていると、「誰に断ってここで商いをしとるんか。ショバ代払え」と脅される。そこへ今や看板スターの幹幸太郎(佐々木蔵之介)

が現れ「許してやれ!」と刀を抜いて追い払う。美月が「お侍さん」と駆け寄り風車を渡す。幸太郎は風車をかざして「風よ吹け。この世にはびこる邪悪を吹き飛ばせ」。

 

 場面代わって―。大京映画社長の黒田(國村隼)からモモケン(林与一)、クリキン(舟木一夫)に相次いで、「これからはテレビの時代です。テレビに出ていただけませんか」と懇願する。モモケンは快く思わないが、クリキンは「考えとこう」と前向きの返事をする。さて、今後の展開は?

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆青春賛歌 目次【1】2022年6月~

☆青春賛歌 目次【2】2023年1月~

☆青春賛歌目次【3】2024年1月~