舟木一夫~2024年コンサート曲⑲⑳
「あゝ荒城の月哀し」「荒城の月」
―後半にテリー伊藤との対談―
本題に入る前に―。春は不安定な天候や昼夜の気温差によって空気中の湿度が高くなため、靄がかかりやすくなります。春の夜、霧や靄に包まれてぼんやりかすんで浮かぶ月を「朧月(おぼろづき)」と言います。満月でも三日月でも、かすんでいれば朧月です。俳句や短歌では春の季語です。朧月の出ている夜のことを「朧月夜」と言います。♪菜の花畑に 入日薄れ…の歌のタイトルは「おぼろ月夜」です。高層雲の一種でベールのように空にかかった雲は「朧雲」で雨の前兆とも。また、着物の裾を薄くして上に行くほど濃くぼかしていく染め方は「朧染め」です。
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本題に入ります―。舟木一夫さんが2024年通常コンサートの19曲目と20曲目に選んだのは、1973年発売のLP「オール・スター演歌の花道 石本美由起作品集」に収録された「あゝ荒城の月かなし」(作詞・石本美由起、作曲・遠藤実)と、1968年9月にリリースされた「荒城の月」(作詞・土井晩翠、作曲・滝廉太郎)でした。
石本美由起作品集には美空ひばり、島倉千代子、都はるみ、大川栄策、バーブ佐竹とともに舟木さんの歌が収められていて、舟木さんは他に「旅情」も歌っています。また「荒城の月」のB面は「赤とんぼ」(作詞・三木露風、作曲・山田耕筰)で、いずれも編曲は松尾健司さんです。
「あゝ荒城の月かなし」はいい曲なのに、当時はシングルカットされなかったんですね。1973年にLPがリリースされた時に「荒城の月」とともにシングルを出せばよかったのに…と思ったりします。舟木さんはステージでしばしば歌われますので、お好きな曲なんでしょうね。石本さんの歌詞は以下の通りです。
一 約束もない 恋ならば
また逢うことも 叶うまい
幸せいずこ 荒城に
春高楼の 唄哀し
二 みどりの髪に 矢絣の
紫似合う 君は泣く
崩れて残る 荒城に
おもかげ草は 今も咲く
三 月日はうつる 人の世に
変わらぬ姿 月ばかり
待つ人もない 荒城の
草笛さびし 恋哀し
一方、「荒城の月」の土井晩翠は仙台・青葉城と会津若松・鶴ヶ城をイメージして作詞し、滝廉太郎は幼少のころ過ごした大分県竹田市の岡城址を浮かべて作曲したと言われています。土井晩翠は後に滝廉太郎に作曲されることを意識して詩を書いたということです。
岡城の桜と滝廉太郎像
一 春高楼の花の宴
巡る盃 かげさして
千代の松が枝 わけ出でし
昔の光 いまいずこ
二 秋陣営の 霜の色
鳴きゆく雁の 数見せて
植うる剣に 照りそいし
昔の光 いまいずこ
三 いま荒城の 夜半の月
替らぬ光 誰がためぞ
垣に残るは ただ葛
松に歌うは ただ嵐
四 天上影は 替らねど
栄枯は移る 世のすがた
写さんとてか 今もなお
嗚呼荒城の 夜半の月
仙台・青葉城と桜
ちなみに、日本の三大詩人と言えば、野口雨情、北原白秋、西條八十の名前が上がりますが、「荒城の月」を作詞した土井晩翠と「初恋」の島崎藤村は「藤晩時代」、「赤とんぼ」の三木露風と「城ヶ島の雨」などの北原白秋は「白露時代」を築いたと言われています。
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お知らせⅠ
舟友さんからご連絡がありました。にテリー伊藤さんと舟木一夫さんの対談が①~④まで掲載されているということですのでご紹介します。
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