舟木一夫~2024年コンサート曲⑮

初恋

―「歌の手帖」5月号に舟木一夫&神野美伽が特別対談―

 

 

 本題に入る前に―。3月下旬から4月上旬にかけ、菜の花が咲く時期に降り続く暖かい長雨のことを「菜種梅雨(なたねづゆ)」と言います。「春の長雨」とも「春雨(はるさめ)」とも呼ばれています。長く続くと言っても梅雨ほど長くはなく、4~6日程度が多く、地域も西日本や東日本の太平洋側にだけ見られます。植物にとっては恵みの雨となって、菜の花や桜の開花を促すことから「催花雨(さいかう)」とも呼ばれています。これはなかなか風流な呼び方です。

 

 

 

 舟木一夫さんが2024年通常コンサートの15曲目に選んだのは1971年9月にリリースした「初恋」(作詞・島崎藤村、作曲・若松甲)でした。藤村が近代詩の誕生と“告知”した「若菜集」(1897年8月発行)に収めた詩で、私もわざわざこの書物の初版を購入して雰囲気を味わったものです。舟木さんが“温存”していた曲でもあり、リリースした時期に注目しなければなりません。 

 

新選名著復刻全集 近代文学館 島崎藤村 若菜集

 

 この曲のオリジナルは1963年11月20日に先輩の小林旭さんが「男の道」(作詞・加藤和枝、作曲・市川昭介)のB面で「初恋」(作詞、作曲は同じ)としてリリースしていました。A面は妻になる美空ひばりさんが婚約中に作詞したことで話題になったものですが、B面が取り上げられることはありませんでした。舟木さんは先輩の曲のアレンジを変えてリリースしました。

 

 

 舟木さんが「初恋」をリリースした1971年は、シングルでは「あゝ名古屋城/金沢城」(4月)、「春の坂道/里の花ふぶき」(8月)、「初恋/あなたの故郷」(9月)など4曲、アルバムも「初恋 舟木一夫抒情歌を歌う」(12月)など3枚だけしか発売していません。舟木さんは“寒い時代”に入っていて、ディレクターには「いよいよ困った時には中ヒットを狙えるものがあるよ」と温存していたものでした。

 

 「初恋」はこの年の31日に東京宝塚劇場で行われた第22回NHK紅白歌合戦の9番目に歌いましたが、1963年の「高校三年生」から9年続けて来た連続出場がこれで途切れてしまいました。舟木さんの“予言”通り、「初恋」はデビュー以来一直線に上り続けて来た舟木さんにとって、“最後のヒット曲”になってしまいました。舟木さんは自分自身のことを冷静に見つめていたんですね。

 

 

 舟木さんはこれより前の1966年9月17日に公開された日活映画「絶唱」(監督・西河克己、共演・和泉雅子ら)に主演していますが、この映画もその6年前に小林旭&浅丘ルリ子で公開しながらヒットしなかったため、舟木さんが持ってきた新企画の「絶唱」についても当時の日活幹部から大反対されながら、それを説得して公開したものです。しかし、公開すると映画は大ヒットしました。

 

 

 

絶唱

 

 ともあれ、舟木さんは映画と歌で先輩・小林旭さんが“失敗”したものの中身を自分なりに変えて再び挑んでヒットさせたことになります。いずれも先輩に“仁義”を切ったうえでの再挑戦だったとは思いますが、果たして小林さんは素直に“あっぱれ”と讃えたのでしょうか。いい意味で舟木さんの“らしさ”を感じる「絶唱」であり「初恋」でした。

                  ★★★

 

 「歌の手帖」5月号に舟木一夫&神野美伽の特別対談 

 

 2024年5月2日(木)から8日(水)まで大阪・新歌舞伎座で舟木一夫さんと神野美伽さんのジョイントコンサートが行われますが、3月21日(木)発売の月刊「歌の手帖」5月号に2人の特別対談がカラー6ページにわたって掲載されます。舟友さんにご連絡いただきましたので、ご紹介します。

 

 

 



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