舟木一夫~2024年コンサート曲①
「想い出通り」
~八代亜紀さんの遺作も「想い出通り」~
舟木一夫さんが2024年通常コンサートのオープニングに選んだ曲は「想い出通り」でした。この曲が初めて登場するのは、舟木さんが31歳の1976年8月にリリースしたLP「レマンのほとり」の第1面です。復刻版CD「レマンのほとり」は2017年11月22日にリリースされています。
「作詞・里中さとる、作曲・岩鬼まさみ」と記されています。漫画通の方にはお分かりのように、2人とも1972年から1981年まで週刊少年チャンピオンに連載された水島新司さんの野球漫画「ドカベン」シリーズに“里中智”(アンダースロー投手)、“岩鬼正美”(三塁手)として登場する架空の人物です。
漫画好きの舟木さんがペンネーム「里中さとる」「岩鬼まさみ」として使ったものと思われます。1976年というと、舟木さんにとって“寒い時代”の足音が聞こえ始めた頃で、酒も飲めないのに音楽仲間と毎晩のように遊び回っていました。そんな遊び仲間の中にフォークグループのリーダーだった川崎浩史さんがいました。
「想い出通り」が収録されているLPの第2面にある「眠らない青春」は“作詞・舟木一夫、作曲・川崎浩史”となっています。その流れで言うと、「作詞・里中さとる」は舟木さん自身、「作曲・岩鬼まさみ」は舟木さんと川崎さんが「あれこれイタズラしていて出来上がった合作曲」と考えていいのではないでしょうか。
♪立ち止まることなく
時は流れ行き
愛だけがはぐれて迷う町
………
♪白い壁らく書き
レンガ道ブティック
何もかも遠い夢の色
………
私がチャンネルNECOと協力して2014年に「舟木一夫オン・ザ・ロード」という番組を作ったこともあって、舟木さんが2014年12月14日に東京・中野サンプラザホールで同年のファイナルコンサートを行った際にオープニングで「想い出通り」を歌ったのが強く記憶に残っています。
私の記憶ではこの年の通常コンサートのオープニングは「立ち話」(1978年6月。作詞・尾中美千絵、作曲・三木たかし)で通していましたが、ファイナルだけ「想い出通り」に変わりました。舟木さんにはそれだけ思い入れがあったのでしょう。この時のコンサートは2015年3月18日にDVDとしてリリースされています。
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「想い出通り」と言えば、2023年12月30日に73歳で急逝した八代亜紀さんの生前最後のシングル(同年3月15日リリース)も同じタイトルの「想い出通り」です。八代さんにとっては110枚目のシングルでした。
八代さんの出世作「なみだ恋」を手掛けた作曲家の鈴木淳さんが2021年12月9日に虚血性心不全のため87歳で亡くなったのを偲び、妻で作詞家の悠木圭子さんが書かれた歌詞に八代さんが曲を付けたものです。
ジャケットには鈴木&悠木夫妻宅で撮影された写真が使われ、背景には八代さんが油彩で描いた2人の肖像画が飾られています。歌詞も素晴らしく、素敵な曲です。八代亜紀さんの遺作です。八代さんを偲んでお聞きになってみてはいかがでしょうか。
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