サンチャゴの鐘 (クラシックCD付)

 

舟木一夫と「サンチャゴの鐘」

 

 舟木一夫さんは1973年9月にシングル「サンチャゴの鐘/夏子」をリリースしています。A面の「サンチャゴの鐘」は作詞・横井弘、作曲・船村徹の名曲だと思います。私は舟木さんの歌の中でも大好きな歌ですが、舟友さんの中にもこの歌が好きという方は少なくないんじゃないでしょうか。もっとも、舟木さんがこの名曲を歌う機会はずっと後からになります。

 

       サンチャゴの鐘

  作詞・横井弘 作曲・船村徹

  

   城あとに ひとり登れば

   ふるさとの 町はたそがれ

   栗色の 髪に生まれて

   かくれ住む 女(ひと)を愛した

   サンチャゴのサンチャゴの

   鐘のある町

 

   武家屋敷 古い土塀に

   残るのは 遠い想い出

   しのび逢う 夜は短く

   山の端の 月に鳴らした

   草笛の草笛の

   歌の哀しさ

 

   海越えて 父を求めて

   ロザリオと 消えたあの女(ひと)

   トンネルに 風の泣く日は

   しなやかな 肩を抱きしめ

   サンチャゴのサンチャゴの

   鐘をききたい

 

 舟友さんには言わずもがなですが、舟木さんはこの曲をリリースした翌月29日に京都市内のホテルで“若気の至り”の行為を起こします。前年4月に続いての行為で、さすがの私も再起は無理だろうと思いました。当時、ある雑誌に投稿して「いつか立ち直ることがあるとすれば、本名の上田成幸でブルースを歌う歌手になって欲しい」という意味のことを書き掲載されました。今でも“思い出”として保管してあります。

 

 ところが、舟木さんの凄い(!?)ところは、翌年4月29日に結婚。7月にNHKの「思い出のメロディー」で“復帰”を果たし、9月にはデビュー曲「高校三年生」と同じ作詞・丘灯至夫、作曲・遠藤実による「旅路」(B面は「寝顔」)をリリースしました。そんなこともあって、この「サンチャゴの鐘」は曲の良さとともに、私の中に強烈にインプットされて忘れられない曲になりました。

 

旅路 (クラシックCD付)

 

 サンチャゴの鐘そのものは1612年に製作されたもので、もともと長崎のサンチャゴ病院にありましたが、その後、経緯ははっきりしませんが、大分県竹田市にある中川神社に移築されました。1950年には「銅鐘」という名称で国の重要文化財に指定されています。銅鐘は高さ80.5㎝、口径66.0㎝、重量108.5㎏。表面に十字の紋と「HOSPITAL SANTIAGO 1612」の銘文が記されています。 

 

サンチャゴの鐘

 

大分県竹田市 竹楽

 

 中川神社は代々の岡藩藩主・中川氏わ祀った神社で、2012年、竹田市が岡藩初代藩主・中川秀成の没後400年を記念して、岡藩城下町400年祭事業の一環としてサンチャゴの鐘のレプリカが作られています。町おこしの活動をしていた後藤貞夫さんという方が、船村徹夫妻が以前に別府を訪れた際に竹田に案内したことがきっかけで、その後、船村さんが再び竹田を訪れ、名曲「サンチャゴの鐘」が生まれたと言います。

 

サンチャゴの鐘

 

 船村さんが横井弘さんに歌詞を依頼した際、「地名は要らない。竹田の象徴である“トンネル”を歌のどこかで使ってほしいとお願いした」ということで、実際に3番の歌詞の中に“トンネル”が生かされています。船村さんは出来上がった思い入れのある曲を舟木さんに提供しました。その直後に舟木さんが“若気の至り”の行為を起こし、ヒットすることはありませんでした。しかし、船村さんにとっては大切な歌です。

 

大分県竹田市の廉太郎トンネル

 

 岡藩城下町400年祭のメーン事業として2012年7月11日、船村さん自身が歌う「サンチャゴの鐘」がリリースされました。船村節が効いている素晴らしい歌です。B面は船村さん作曲の「パライソの華」。パライソは天国の意味で、作詞は船村さんとも親交のあった別府市在住の片瀬みつよさんです。片瀬みつよというペンネームも船村さんに付けてもらったと言います。

 

 

サンチャゴの鐘

 

 ところで、船村&横井コンビの曲としては、ほかにも「帰郷」(1972年7月)、1977年12月のアルバム「限りない青春の季節」に収録された「霧のわかれ」、そして、1975年11月に東京郵便貯金ホールと大阪万博ホールで披露された組曲「北の出船」があります。横井さんは舟木さんの「永訣の詩」(1969年2月、作曲・古賀政男、B面は「京の恋唄」)、「都井岬旅情」(1973年1月、作曲・竹岡信幸、B面は「白鳥」)なども作詞しています。

 

 

 

 ともあれ、「サンチャゴの鐘」には船村さんの熱い思いが込められ、横井さんが素晴らしい歌詞を付けて出来上がった名曲です。舟木さんがよく話されるように、ステージの流れの中では“置き場所”に困る曲かも知れませんが、“単独”でも是非、歌っていただきたいですね。

 

 

 

 

 

 

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