舟木一夫と共に㊴

芸能生活★周年㊥

明日咲くつぼみに

 

 舟木一夫は以前、50周年に向けての考え方について「あまり“周年”は気にしないタイプでね。自分に対して『だからどうした』みたいなところがある。大げさなことは考えていませんが、現役でびしっといける最後の“周年”というのはあります。だって次の55周年は70歳を超えていますからね」。また、50周年記念曲については「僕がとても歌いたい歌がいくつかあるので、極端なことを言えばカバーでも構わないと思っています。無理むりそのために寸法を合わせて歌を作るよりも、ナチュラルな流れでいけばいい」と話している。

 

 

 その結果、選んだのが「明日咲くつぼみに」(作詞・永六輔、作曲・久米大作)だった。舟木は「この歌は永六輔さんの作詞で、気張っていなくて、さり気なくて、来るものは来るという、それでいてお互いの応援歌にもなっていますので、ステージの構成も度胸のいい組み方が出来ます。僕としては50周年を足掛かりにしてどうこうするのではなく、来年はお客さまと一緒に思いっきり想い出に浸ったほうがスッキリするんじゃないかと考えていまして、そうするとこの歌の意味がよりはっきりしてくると思いますね」と語った。

 

 

 

 この歌との巡り合わせは全くの偶然だった。舟木がスケジュールをメモしながらテレビを付けると三波春夫の特別番組をやっていた。チラチラ見ていたら「明日咲くつぼみに」がポッと出てきた。4小節を聞いた辺りであれっと思ってメモを止めて聴き入った。探していたものがここにあったという感じだった。舟木は「舟木一夫が三波さんのカバーというと、えっと思われるかもしれませんが、聴いていただけると納得だと思います」と話している。2012年1月1日にリリースしているが、抱き合わせ曲が40周年の年にリリースした「浮世まかせ」だったのがいい。舟木はこの曲は40周年より50周年に相応しいと考えていたからだ。

 

明日咲くつぼみに (クラシックCD付)

 

 舟木は2年後の2014年6月18日に「眠らない青春/恋人形」をリリースした。「眠らない青春」(作詞・舟木一夫、作曲・川崎浩史)は1976年8月に発売されたアルバム「レマンのほとり」に収録されている曲。「恋人形」(作詞・舟木、作曲・山路進一)も同じ頃に作られたものだが、それまでシングルカットはしていなかった。1976年というと、“寒い時代”の足音が聞こえ始めた頃で、お酒も飲めないのに音楽仲間と毎晩のように遊び回っていた。「眠らない青春」はそんな遊び仲間の一人でフォークグループのリーダーだった川崎とともに「あれこれイタズラしていて出来上がった曲」だという。

眠らない青春

 

 

― レマン湖を望むシヨン城 ―

(UHQCD)レマンのほとり

 

 舟木は新曲を出す意義について当時、「自分が歌える残り時間を考えたら、新曲として今の舟木一夫に必要なのはヒットするかどうかということではないんです。その曲を聴かれたお客さまが『この曲ならステージの流れの中でちゃんと戦力になっていて、しかも他の曲にいい影響を及ぼしているな』と実感していただくものでないと意味がないんです」と語っている。しかも、着実に増えている男性客にも応えられる曲にしようと、一番素直な気持ちで詞を書いた時代の曲の中から選んだ結果が「眠らない青春/恋人形」だった。

 

 

 

 2017年1月25日にリリースした「みんな旅人/下町どこさ」(いずれも作詞&作曲・舟木)も同じような狙いだった。「みんな旅人」は“寒い時代”のど真ん中の1982年6月に発売したアルバム「WHITE」、「下町どこさ」は翌年4月発売の「WHITEⅡ」に収められている。こうした流れの中で、55周年も60周年に向けての“通過点”という位置づけで、あえて“記念曲”というものを出す予定はなかった。       (敬称略)

 

みんな旅人

 

 

 

 

音譜 音譜 音譜

 

 

 「決定版  舟木一夫の青春賛歌」(産経新聞出版)が2023年11月28日(火)に発売されます。これに先立ち、16日(木)に東京国際フォーラム・ホールAで開かれる「舟木一夫コンサート2023ツアーファイナル」の特設売り場で限定先行販売(特製フォトカード付き)されます。

 

 

音譜  音譜  音譜

 

 

 

☆青春賛歌 目次【1】2022年~

☆青春賛歌 目次【2】2023年~