舟木一夫と共に㊱

BIG3について㊥

 

 2014年のBIG3コンサートのために作ったパンフレットがある。舟木一夫、西郷輝彦、三田明のコンサートに寄せる想い、3人を応援する女優、プロデューサー&演出家、タレントからのメッセージが綴られている。

 

 舟木は「3人はわずか8か月の間にデビューした『同期の桜』。もっとも、近頃は花なんぞすっかり散っちゃって『動悸の枯木』。『枯木も山のにぎわい』というから、最後の競演(つーよりも狂演だな)をのんびりお楽しみを…」。後援会誌「浮舟」に毎号書くような調子で、いかにも舟木らしい。応援者は和泉雅子で、「明るいだけでチャランポランの私と、まじめな姿勢で作品に取り組む舟木クンのコンビが多くの名作を生んだと思っています」。「北国の街」、「高原のお嬢さん」…、そして「絶唱」。このコメントは極めて納得デス。

 

 

笑ってよ、北極点

 

映画ナタリーより

 

―  舟木一夫の「風来坊」  ―

 

 これに比べて西郷は「嬉しく、はしゃぎたい気持ちを押さえることが出来ません。お互い、まだステージにバリアフリーは必要ないようです。最高のステージでファンの皆様にご恩返し出来たらと思います」と、西郷らしく、ちょっとふざけたつもり程度。応援は石井ふく子。2人の出会いは2007年に東京・明治座で行われた創始者・三田政吉の追善公演「忠臣蔵」(下がチラシ)。2人で創り上げたのは、今までにない堀部安兵衛。「私は寡黙で男っぽい西郷さんに惚れ込んだ。西郷さんというすてきな仲間が加わって、また一つ、私に宝石が増えて、嬉しい出会いになりました」。こちらは2人とも真面目だ。

 

あせらず、おこらず、あきらめず (単行本)

 

 

 三田は「楽しいこと、悲しいこと、愛し愛されたこと。そして人との別れも今ではみんな思い出の1ページ。懐かしい歌や新しい歌を通して思い出を語り合おうではありませんか」と、こちらは呼びかけ口調。応援はモノマネの清水アキラ。「生まれて初めて両親に連れて行ってもらったのが三田明ショーだった」。しかも「何よりも楽しかったのがものまねコーナーでした」という。三田は「象印スターものまね大合戦」の常連だった。阪神大震災の時に結成した“絆の会”の12人にも誘われ交流が続いた。モノマネつながりというのは、三田らしいエピソードだ。

 

 

― mainichi.co.jpより ―

 

 ところで、3人はそれぞれをどう呼んでいたのか。2014年7月号の月刊「歌の手帖」の3人へのインタビューに載っている。舟木は「輝さん」/「アキちゃん」、西郷は「舟木さん」(たまに冗談で「上田くん」=舟木の本名)/「アキちゃん」、三田は「舟木さん」/「輝さん」。当時はデビューが3日早いだけでも先輩、後輩のけじめは厳しかったが、長い年月を経れば先輩・後輩というより“歌仲間感覚”になる。それでも「舟木さん」は変えられないのだろう。同じインタビューで、お互いの歌で「俺が歌いたかった歌」も聞かれている。

 

 

 舟木は西郷の「涙をありがとう」と三田の「若い港」。西郷は舟木の「君たちがいて僕がいた」を挙げたが、これはちょっと意外かもしれない。三田は西郷の「チャペルに続く白い道」と舟木の「学園広場」を挙げた。余談として、西郷は「潮風が吹き抜ける町」を出した時、最初は自分の新曲ながら「これ、俺じゃないよ、舟木さんだよ」と思ったという。司会者の玉置宏からも「西郷くん、これはいい歌だよ。でも舟木くんが歌ったら、もっといいかもしれないね」と言われたことを明かしている。これは舟木ファンの多くも当時そう思ったのではないか。

 

涙をありがとう [EPレコード 7inch]

 

【EP】三田明「若い港/初恋の夢」

 

君たちがいて僕がいた [EPレコード 7inch]

 

チャペルに続く白い道[EPレコード 7inch]

 

学園広場 [EPレコード 7inch]

 

潮風が吹き抜ける町 [EPレコード 7inch]

 

 

☆舟木一夫1944(昭和19)年12月12日、愛知県一宮市生まれ。1963年6月5日、「高校三年生/水色のひと」(日本コロムビア)でデビュー。O型

 

☆西郷輝彦1947(昭和22)年2月5日、鹿児島県鹿児島郡谷山町(現・鹿児島市)生まれ。1964年2月15日、「君だけを/ひとりぽっち」(日本クラウン)でデビュー。A型

※2022年2月20日午前9時41分、前立腺がんのため都内の病院で亡くなりました。

 

☆三田明1947(昭和22年)6月14日、東京都昭島市生まれ。1963年10月10日、「美しい十代/千羽鶴」(日本ビクター)でデビュー。AB型

 

 

 

 

 

 

☆青春賛歌 目次【1】2022年~

☆青春賛歌 目次【2】2023年~