舟木一夫と共に㉟

BIG3について㊤

 

 橋幸夫舟木一夫西郷輝彦で「御三家」、3人に三田明を加えて「四天王」または「BIG4」、舟木、西郷、三田の3人で「BIG3」。そのBIG3のコンサート「青春歌謡 BIG3 2014」が2014年に行われた。4月4日の神奈川・川崎市教育文化会館を皮切りに、12月20、21日の大阪・新歌舞伎座まで計50か所で100公演を完走した。元祖アイドルのコンサートだけに、どの会場も同世代のお客さんが埋め尽くし、青春時代にタイムスリップしたかのような熱気に包まれていた。西郷への追悼の気持ちも込めて、ある日のステージを再現する―。

 

千葉県文化会館

 

 4月17日に行われた千葉県文化会館の大ホールは1階から3階まで約1800席。開幕前、舟木はいつものように1階中央あたりの客席に座って、演奏しているバンド、照明スタッフらに細かい指示を出していた。「3人だと気楽でいいですね」と声をかけると、舟木は「1人でやるときより3人の方が気を遣うんですよ」と笑って答えたが、確かに舟木はツアー中、随所で3人はもちろん、お客さんへの“気配り”を忘れることはなかった。

 

千葉県文化会館大ホール

 

   午後2時半、演奏とともに緞帳がゆっくり上がると、ステージ下手から三田、舟木、西郷が揃って姿を見せた。フォーマルな黒のタキシードで登場した舟木はいきなり「三田明です」と軽いジョーク。3人の中でただ一人孫がいる西郷をネタに「おじいさんというより、じっちゃまだね」。会場が和んだところで、三田、西郷の順にトークを挟みながらヒット曲から新曲まで10曲ずつを歌い、3人が「あゝ上野駅」(西郷)、「霧子のタンゴ」(三田)、「東京の灯よいつまでも」(舟木)など昭和の名曲数曲を披露した。

ああ上野駅/男船 (クラシックCD付)

 

霧子のタンゴ/哀愁のバイパス道路(ロード)[EPレコード 7inch]

 

 
 
 

 

 

― 舟木一夫のサイン ―

 

 続いて舟木の番。「君へ心込めて」「初恋」「絶唱」を歌い終えると、「さっき私が歌い始めた時に9人がトイレへ行かれ、そのうち7人が生還なさいましたが、まだお帰りでない方が気になって…」と笑いを誘い、アカペラで「あ~か~い~ゆう~ひが~」と歌いかけると、客席のあちこちから「に~れ~のこかげに~」と続き、西郷、三田ファンも含めて大合唱になった。その後、「学園広場」、バラード調の「高原のお嬢さん」、口笛とともに「哀愁の夜」(5番もサービス)に入り、新曲「眠らない青春」、最後は「銭形平次」で締めくくった。

 

― 西郷輝彦のサイン ―

 

 舟木は終始、お客さんへのサービス精神を忘れなかった。西郷が足を上げたり激しく踊ったりして歌った後、ハーハーという感じの西郷のところへ携帯用の酸素ボンベを持っていき「いいかげんにしなさいよ。孫までいるんだから」と西郷の口に当て会場の笑いを誘う。一方で、西郷、三田への気配りも。西郷の故郷・鹿児島の宝山ホールで開催した際は、三田、西郷、舟木といういつもの順番を変えて、三田、舟木と続き、西郷にトリを譲った。三田の出身地である東京・八王子のオリンパスホール八王子の時は、三田がトリを務めている。

 

― 三田明のサイン ―

 

 実は3人のコンサートはこの時が初めてではなかった。最初は4年前の2010年4月23日に愛知県芸術劇場で行っている。全国ツアーは翌年の2011年。各会場では東日本大震災の被災者のための募金活動も併せて行い、計40公演を行った。いずれの会場も大盛況で、ファンから再開催の要望が殺到していたばかりでなく、3人も約50年ぶりに長いステージを共にして初めて“気の合う仲間たち”を実感して再度やろうという暗黙の約束は出来ていた。だから、2014年は初めから息がぴったりという状態でスタートを切る形になった。

 

愛知県芸術劇場

 

 

    

舟木⇒「当時はお互い負けたくないと思ってやっていました。それぞれの歩幅で歩いてきて肩の力が抜けたところで、今は一緒に出来る。同じ時代に青春を過ごしたことが時間が経ってみると愛おしく感じます」

 

    

西郷⇒「当時は1年間に何百人もの新人がテビューし、その中でしのぎを削って生きていた。その緊張感が50年たって解けてきた。だから、今のステージがどれだけ楽しいか」

 

    

三田⇒「いろんな事情で僕たち3人が口もきけない時代があって、ファン同士がいがみ合うなんてこともあった。それが今、皆さんが当時のことを仲良く語り合ったりする。これは嬉しいです」

                                 (敬称略)

 

 

 

 

 

 

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