歌川広重 東海道五十三次 原

 

舟木一夫と共に㉝

娯楽時代劇について(下)

 

 チャンネルNECOの「オン・ザ・ロード2014」で、舟木一夫の娯楽時代劇の共演者が舟木について発言している。

 

― 堀田隼人 NHK ARCHIVES 「赤穂浪士」より ―

 

 <林与一~ヨイっちゃん>

 「これだけ時代劇を愛してお芝居が出来る人は舟木さんの他にはいません。こんなに長い付き合いが出来ているのは、彼の人間性そのものです。あの方は脇役は出来ません。座長として続けて欲しい方。お神輿じゃないけれど、我々はいつまでも担いでいきたいと思っています」

 

― 林与一のサインー

 

 与一との付き合いは1964年のNHK大河ドラマ「赤穂浪士」以来。この時は舟木=矢頭右衛門七、与一=堀田隼人という役柄だったが、2017年12月に東京・新橋演舞場で行われた舟木の芸能生活55周年特別公演「通し狂言 忠臣蔵」では、舟木=大石内蔵助、与一=吉良上野介にまで上り詰めている。

 

  ― 大石内蔵助 ― 

 

 

 <長谷川稀世~キヨちゃん >

 「舟木さんの『一本刀土俵入り』の最後の入りを見た時、本当に父(長谷川一夫)に似ていて、もう一度父に会えたみたいに思えたの。舟木さんは舟木さんらしいというか、舟木一夫というブランドを沢山持っていらっしゃる。本当に芝居がお好きで、その発想が面白いんです。どうしてここでこういうことを考えられるのかって。そばにいて一緒に作品を作り上げていきたいという方です」

 

― 長谷川稀世のサイン ー

 

 稀世は若いころはシャイな舟木とほとんど話をしたことがなかったという。稀世が2008年11月に長谷川一夫生誕百年を記念して「長二郎変化」(求龍堂、下の写真)を出版した際は、舟木と「百年にひとりの人」と題して2人で心行くまで対談している。この対談はなかなか中身の濃いもので、舟木がいかに時代劇に精通しているかが良く分かる。お読みでない方は、是非ご一読を。

 

 

 <葉山葉子~ハコちゃん>

 舟木が「芸能界の幼馴染」という葉山は7歳から劇団若草に所属して名子役を演じた。テレビに出るようになってからは耐える女の役も増え、17歳にして“メロドラマの女王”と呼ばれた。以下はチャンネルNECOでのインタビューではないが、葉山にも“舟木評”を聞いている。

 

― 葉山洋子のサイン ―

 

 「舟木さんが初めて座長をされた新歌舞伎座の公演は、当時20歳の私も大阪での初舞台だったんです。昼夜で出し物が違っていましたから大変でした。何年かご一緒しているうち、舟木さんは時代劇にものすごくお詳しくていらして、何とかの映画というとパッパッパッと出演者の名前が出てくるし、カツラや衣装、小道具のことなど本当によくご存じなんです。私たち役者の方が恥ずかしいくらいで、こういう時はどういう衣装かと相談すると、ちゃんと答えてくださるので助かっているんですよ」

 

 

 <舟木一夫>

 舟木自身は娯楽時代劇をどうとらえているのか。今でも大きく変わらないので、2014年に行ったインタビューからまとめてみた。

 

 舟木によると、娯楽時代劇というのは「忠臣蔵」や「清水の次郎長」などの定番の時代劇、「眠狂四郎」や「新吾十番勝負」など正統の時代劇、いい意味で“遊び”というか融通の利く時代劇の3つに分類でき、それぞれが3分の1ずつを占めているという。比較的最近の舟木の作品でいうと、「花の生涯」や「八百万石に挑む男」などは骨太で歯ごたえがある正統派の時代劇、「いろは長屋の用心棒」などは手の中に入れて握り方によっていかようにも変化する融通の利く時代劇ということになる。

 

 

 そして、「花の生涯」が成功したのは「娯楽時代劇の何たるかを知り尽くした里見浩太朗という方の存在があったからあの台本が作れたし、硬くならない芝居に仕上げることが出来た」と分析。「八百万石に挑む男」については「尾上松也という方の存在が大きい。芝居のスタイルが僕と似ていて、いい相手だった。あの舞台をやりながら、“高校三年生もついにここまで来たか”としみじみ思った」と話してくれた。

 

                  ◇

 

 舟木は芸能生活40周年を過ぎたあたりから、娯楽時代劇の骨法(礼儀・作法)ということを良く言うようになり、その骨法を踏まえて演じてくれる役者が7割以上になるレギュラーの座組“舟木組”を編成して舞台に臨んでいた。葉山もその一員で「若い人との距離感をカバーしてくれる人。主役より半歩下がって後ろに控えながら、それでいて存在感を示す行儀のいい女優さん」と語った。舟木の舞台を支えている役者を見ていると、「骨法」をわきまえた方々なので、どんな演目になっても娯楽時代劇の“いい香り”で包んでくれる。                        (敬称略)

 

 

 

 

 

 

 

 

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