舟木一夫と共に㉛「絶唱」の“封印”
舟木一夫が「絶唱」を一時“封印”したことがあるが、解いたのはいつだったのかが話題になった。振り返ってみたい。
私が解いた日にちを間違えたことに対して、ブログを読んでいただいてる「しのぶさん」から解かれたのは1993年9月14日に東京厚生年金会館で開かれた30周年ファイナルコンサート「絶唱~ありがとうあなた~」ではないかという指摘があった。一方、舟木のことに詳しい音楽評論家の神山亨也が「3‘02″の不死鳥」という連載の中で、1994年9月15日に東京メルパルクホールで行われた後援会員のためのコンサート「舟木一夫 CONCERT 風アダルトに」で“解除”したと書いていた。
神山によると、コンサートは2回。「よし、そろそろ歌えるな。いや、歌いたいんだ」。彼は自分に言い聞かせ納得して、この日のステージを迎えた。1回目、「絶唱」の前奏で客席から大きな拍手が送られた。ファンも先刻承知なのだ。が、舟木本人にとっては、その回は納得のゆく出来ではなかったらしい。2回目、やはり大きな拍手で迎えられた。今度は得心がいったようだ。ステージ上で感じるファンの反応も含めての合格点だった。
そして、同年11月の中日劇場での1か月の公演の間、舟木は「絶唱」を歌う時だけタキシードに着替え、前奏に入る前にスポットをあびて客席に呼びかけた。「小雪! 小雪!」。神山はそう記している。さらに、神山が書いた「風アダルトに」のパンフレット(上の写真)を覗いてみると、曲目は入ってないが、舟木自身による見開き2ページにわたる文章が載っていた。舟木のその時の想いが伝わってくるので、そのまま掲載する。
歌い手としての自分が、自然に何か変って行く時、なぜか“ふわっ”と自身で感じるものみたいです。ボクはどうみてもその辺りをわりとはっきり、感じるタイプの様で、今、それを“ぼやっ”と感じている所です。今日のステージがボク自身、80~90点をつけられるようなものになれば、多分、近い後日、振り返ってみたとき、今日をまたいで“ボクの何かが変わったゾ……”ってな或るきっかけのステージになるのかも知れません。こんな風に書くと妙に大げさなことに聞こえそうですがそんなことはないのデス。いきなり皆さんに伝わる所までは行かなくても、歌い手自身にその“感じ”があれば、それは短時間のうちに必ず皆さんに伝わるときがあるわけで……ね。
もし、ボクが歌い手として以前から申し上げている「語りどき」にまで、幸せにしてたどりつけると仮定すると、「歌いどき」の最後の脱皮のスタートが、今日になるのかも知れない――ふっと、そんな気がしているだけのこと。その前提として、ボク自身が80~90点をつけられるステージになることが必要だってコトです。うまい歌い手より、いい歌い手――その想いを押し通すために、多分ボクが、もう一度「歌いどき」の中で、ひと皮むけるときがあって欲しいと自分自身、願っているまでのことで、別に大げさな事でもない。さあ、今日2回のステージが終って、ボクが舟木選手に何点つけることが出来るのか。恐くもなんともない。――ただ楽しみです。
この文章からは、このステージで「絶唱」の“封印”を解いたかどうかは分からないが、ひょっとしたらそうかもしれないという雰囲気は伝わってくる。
その後、「乙女さん」からの紹介を受けて、「気楽に生きようのらぶさん」のサイトの中の「こよなく愛する舟木さん」というメニューを覗いてみると、これまでの各年のコンサートなどで舟木が歌った曲目、芝居の演目・出演者などが全て書かれていた。これを見ると、舟木が“封印”後に初めて「絶唱」を歌ったのは、やはり「しのぶさん」の指摘通りの結論になった。
さらに、「かずさん」から、「絶唱」の“封印”を切ったのは30周年ファイナルコンサート「絶唱~ありがとうあなた~」で、実際に見に行った時の感動は今も忘れることができません―というコメントが届いた。そして、「セブンアップさん」からはさらに具体的な話が届いた。それによると、舟木はアンコールで「吉野木挽唄~絶唱」を歌い、会場はびっくりしたような凄い拍手に包まれていた。その際、舟木からこの歌へのコメントはなく、最後に「それじゃあ31年に向かって歩いて行こうと思います。今日はありがとうございました」という挨拶があったという。これには脱帽。
<1993年9月14日 30周年ファイナルコンサートの曲目>
①人生半分
②学園広場
③花咲く乙女たち
④友を送る歌
⑤北国の街
⑥哀愁の夜
⑦高原のお嬢さん
⑧水色のひと
⑨木挽哀歌
⑩只今授業中
⑪その人は昔のテーマ
⑫夢のハワイで盆踊り
⑬浜の若い衆
⑭まだ見ぬ君を恋うる歌
⑮涙の敗戦投手
⑯あゝりんどうの花咲けど
⑰右衛門七討入り
⑱銭形平次
⑲泣かないで
⑳いつか愛したおまえ
㉑ありがとうあなた
㉒友よ
㉓修学旅行
㉔仲間たち
㉕君たちがいて僕がいた
㉖あゝ青春の胸の血は
㉗青い山脈
㉘高校三年生
㉙人生半分
㉚吉野木挽唄
㉛絶唱
著名な音楽評論家も時には、間違うことがあるということですね。
(敬称略)
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