― 東京 泉岳寺の本堂 ―

舟木一夫と共に㉖NHK大河ドラマ裏話

 

 舟木一夫はこれまでに4つのNHK大河ドラマに出演している。1964年の「赤穂浪士」(四十七士の一人・矢頭右衛門七)、1966年の「源義経」(平経盛の末っ子・敦盛)、1971年の「春の坂道」(徳川二代将軍秀忠の子・忠長)、1997年の「毛利元就」(架空の人物・椋梨景勝)がそれだ。最初の3つの大河にはそれぞれ舟木が出演した証の記念曲「右衛門七討入り」(作詞・西沢爽、作曲・遠藤実)、「敦盛哀歌」(作詞・村上元三、作曲・古賀政男)、「春の坂道」(作詞・泉羨太郎、作曲・古賀政男)がついている。今回は記念曲をめぐるあれこれを記したい。

 

 

 「赤穂浪士」には大石内蔵助に映画俳優の長谷川一夫、妻・りくに映画女優の山田五十鈴、吉良上野介には新劇界の重鎮・滝沢修をはじめ、歌舞伎界から七代目尾上梅幸八代目坂東三津五郎、新劇から宇野重吉ら各界の大物ら豪華な顔触れが揃った。とりわけ大映の看板俳優だった長谷川を担ぎ出すために、NHK芸能局長らが「看板を電気紙芝居には出せない」という大映社長・永田雅一を何回も訪ね口説き落とした。四十七士を全員揃えての吉良邸討ち入りをいつ撮るかが最も難航した。人気俳優、歌手らのスケジュールが合うのは8月14日と15日の2日しかなく、真夏に討ち入りシーンを撮影することになった。

 

― 大河ドラマ・赤穂浪士  NHK ARCHIVESより ―

 

右衛門七討入り (クラシックCD付)

 

 

 「源義経」で舟木が平敦盛役で出演することが決定すると、NHKには「敦盛は死ぬ運命だけど、舟木一夫は絶対に殺さないでください。約束してくれないと、母も私も食事がノドを通りませんから」というものから、「NHKともあろうものが大河ドラマにまた人気歌手を利用するとは何事ですか」などという電話や投書が殺到した。今では考えられないことだ。そして5月29日、「一の谷合戦」の放送で敦盛が熊谷次郎直実と一騎打ちの末に首を斬られて戦死すると、「あれほど死なすなと多くの視聴者から言われていたのに、なぜ殺してしまったんだ」と、それまでの2倍以上の抗議の電話が殺到した。

 

 

敦盛哀歌

 

 

 当時は歌手のレコーディングには作詞家、作曲家ら多数が立ち会っていたが、「敦盛哀歌」の時は古賀政男が所要で立ち会えなかったため、古賀は後でテープを聴いて驚いた。音が一か所間違っていたのだ。調べたら、舟木に渡されていた譜面に誤りがあったのを、舟木が譜面通りに歌ったことが判明した。古賀はのちに「早速、舟木君から電話があり、本人には責任がないのに、まるで自分がミスしたように謝っていたのをよく覚えている」と語っている。舟木は歌手生活15周年記念大全集を出す際に「敦盛哀歌」を録音し直し、約10年ぶりに“正しい「敦盛哀歌」”が誕生することになった。

 

― 軍扇を持つ熊谷直実と平敦盛    Wikipediaより―

 

 3作目の「春の坂道」のレコーディング・スタジオには作曲した古賀政男が和服姿で姿を見せた。本番の掛け声がかかり音録りが始まり舟木が歌い出すと、古賀は突然懐から白扇を取り出して即興で日本舞踊を踊り始めた。真剣に歌っている舟木は全く気付かなかったが、周りにいたスタッフらは「何が起こったのか?」と思わず息をのんだ。古賀はずっと踊り続けたため、さすがに舟木も途中で気が付いたが何事もなかったように歌い続けた。後で関係者に聞いたら、舟木の歌声に思わず興が乗って踊り出したということらしく、よほど気分が良かったのか初めてのことだったという。

                                 (敬称略)

 

 

 

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