舟木一夫が京都・南座で選んだ曲⑩

舟木一夫と「グッド・ナイト」

～2023.5.26-28京都・南座での選曲～

舟木一夫さんが2023年5月26日から28日まで、京都・南座で行ったシアターコンサート第一部「ブルースのか・け・ら」の11曲目に選んだのは、松尾和子さんが1959年に和田弘とマヒナスターズとともにリリースしたデビュー曲の「グッド・ナイト」(作詞・佐伯孝夫、作曲・𠮷田正)でした。B面はフランク永井さんとのデュエット曲「東京ナイト・クラブ」です。

　松尾さんは進駐軍のキャンプやナイトクラブで歌っていましたが、プロレスラーの力道山さんが東京・赤坂で経営していた「クラブ・リキ」の専属歌手として歌っているところをフランク永井さんに“スカウト”され、𠮷田正さんに紹介されてビクターに入社しました。デビュー曲の「グッド・ナイト」は1959年度のビクターの年間ヒット賞を受賞しています。

　　　GOOD NIGHT GOOD NIGHT

　　　SWEET HEART GOOD NIGHT

　　　なんでもない様に街角で

　　　別れたけれど　あの夜から

　　　忘れられなくなっちゃった

　　　名残り惜しさに　ああ

　　　星を見つめりゃ　泣けてくる

　　　GOOD NIGHT GOOD NIGHT

　　　SWEET HEART GOOD NIGHT

　松尾さんがデビューした1959年といえば、舟木さんが愛知県一宮市立萩原中学の音楽担当教諭から、NHK名古屋放送局で60人のコーラスグループ「東海メールクワイヤー」の常任指揮者・山田昌宏さんを紹介してもらい、中学三年の一学期から歌唱レッスンを受け始めた年です。レッスンは毎週土曜日の午後、段階を踏んで本格的に習いました。その後の舟木さんのあらゆる“音楽の基礎”はここで固められたと思います。

　松尾さんは1959年12月に第2弾として、和田弘とマヒナスターズとともに「誰よりも君を愛す」(作詞・川内康範、作曲・𠮷田正)をリリース。1960年の第2回日本レコード大賞の大賞を受賞し、第11回NHK紅白歌合戦に初出場しています。「東京ナイト・クラブ」もデュエットソングの定番として歌われるようになり、松尾さんは“ムード歌謡の女王”と呼ばれるようになりました。

　舟木さんと松尾さんはレコード会社が違いますし、NHK紅白歌合戦でも同じステージに立ったことがありませんが、松尾さんは1980年代には歌番組だけでなくテレビのバラエティ番組にも出るようになったので、その辺で2人の接点があったかもしれません。確認することは出来ませんでした。ご存知の方がいらっしゃれば教えていただけませんか。

　松尾さんもフランク永井さんと同様、晩年は淋しいものでした。1991年に長男が覚せい剤取締法違反で実刑判決を受けてから芸能活動を自粛するようになり、自ら経営していたブティックも8億円の負債を抱え自殺未遂を起こすまで追い詰められます。1992年9月に自宅の階段から転落して頭部を強打したことが原因で急死しました。57歳の若さでした。記憶に残る色気のある歌手でした。