舟木一夫が京都・南座で選んだ曲⑧

舟木一夫と「東京しぐれ」

～2023.5.26-28京都・南座での選曲～

　舟木一夫さんが2023年5月26日から28日まで、京都・南座のシアターコンサート第一部「ブルースのか・け・ら」の9曲目に選んだのは、フランク永井さんが1965年にリリースした「東京しぐれ」(作詞・佐伯孝夫、作曲・𠮷田正)でした。フランクさんはこの曲で大晦日の第16回NHK紅白歌合戦に出場しました。

　「しぐれ」は晩秋から初冬にかけて、ぱらぱらと降ってはすぐ止む通り雨のように降る雨のことで、俳句では冬の季語になっています。歌詞に出てくる“カレンダーガール”は当時、米歌手のニール・セダカさんのヒット曲「カレンダー・ガール」で有名になりました。カレンダーのピンナップ写真のモデルをしている女性ですね。

　　♪東京しぐれか　泣かせの雨か　　　　　

　　　こんなに濡れたと　なぜ来ない　　　　　

　　　あの娘に空似の　カレンダーガール　　　

　　　こっち見ている　カウンター　　　　　　

　　　しぐれ移り気　移り雨　　　　　　　　　

　　♪東京しぐれか　並木の雨か

　　　酒場のガラスに　濡れかかる

　　　孤独な心に　あの娘のことを

　　　想い出させて　泣かせるよ

　　　しぐれ未練な　通り雨

　「東京しぐれ」がリリースされた1965年は、舟木さんがデビュー3年目の年で、「北国の街」「東京は恋する」「たそがれの人」「高原のお嬢さん」などシングル13枚とアルバム2枚を出すとともに、映画(日活)も「花咲く乙女たち」「北国の街」「東京は恋する」「高原のお嬢さん」の4本に出演しています。

　舟木さんにとって個人的に大きな出来事は、5月8日、両親をはじめ愛知県一宮市に住む家族全員を東京に呼び寄せて一緒に住むため、東京都世田谷区代沢の元大学教授宅を購入したことです。舟木さんはまだ20歳になったばかりでしたから、週刊誌でもその広大な邸宅と庭が大きな話題になりました。

　フランクさんがNHK紅白歌合戦に出場したのは1957年の第8回から1982年の第33回までの連続26回。舟木さんとは1963年の第14回から1971年の第22回までがダブっています。フランクさんが「東京しぐれ」を歌った1965年の紅白歌合戦には、舟木さんはトップバッターとして「高原のお嬢さん」を熱唱しました。

　以前にも書きましたが、舟木さんは歌手になるために上京後、遠藤実さんのレッスンがない日は、当時住んでいたアパート近くの上智大グランド前の土手で夜な夜な発声練習を続けていました。練習の後は近くの銭湯「梅の湯」で汗を流していました。土手や銭湯ではフランクさんの「夜霧の第二国道」などを歌っていました。