舟木一夫が京都・南座で選んだ曲⑦

舟木一夫と「女と男のブルース」

～2023.5.26-28京都・南座での選曲～

　舟木一夫さんが2023年5月26日から28日まで、京都・南座で行ったシアターコンサート第一部「ブルースのか・け・ら」の8曲目に選んだのは、島和彦さんが歌った「女と男のブルース」(作詞・吉岡治、作曲・船村徹)でした。あまりなじみのある歌ではありませんが、この辺の選曲が舟木さんならではです。B面の「土曜日の女」も同じ作詞、作曲家による作品ですが、いずれも大きなヒットはしなかったようです。

　島さんの最大のヒット曲は1966年の「雨の夜あなたは帰る」(B面は「恋人たちの夜」)で、その年のNHK紅白歌合戦に出場しました。1965年の「悦楽のブルース」(B面は「志津子」)は多くの歌手がカバーしています。これらの曲がすべて「作詞・吉岡治、作曲・船村徹」というのが面白い。舟木さんは「雨の夜あなたは帰る」もよく歌いますが、船村さんのメロディーが心地良くて歌っているんじゃないでしょうか。

　吉岡さんは1953年にサトウハチロウの門をたたいて弟子入りし、1956年の「鳩笛ならそか」で作詞家デビュー。島さんが歌った「悦楽のブルース」で本格的に作詞家としての活動を始めました。吉岡さん、31歳です。この歌は1965年8月29日に公開された松竹映画「悦楽」(監督・大島渚)の主題歌になりましたが、映画の印象からでしょうか、歌はすぐ放送禁止になりました。大島さんの真骨頂(!?)ですね。

　吉岡さんは後に、美空ひばりさんの「真赤な太陽」(作曲・原信夫)、島倉千代子さんの「鳳仙花」(作曲・市川昭介)、都はるみさんの「大阪しぐれ」(作曲・市川昭介)や「小樽運河」(作曲・弦哲也)、五木ひろしさんの「細雪」(作曲・市川昭介)、石川さゆりさんの「天城越え」(作曲・弦哲也)、大川栄策さんの「さざんかの宿」(市川昭介)なども手がけることになりました。

　「女と男のブルース」は一番から四番まであります。一番の歌詞は、♪とても好きだと　云うあんた　明日はきてねと　云うあんた　合わすグラスの　その酒は　嘘となみだの　カクテルね。そして四番は、♪生きていくのは　つらいけど　これがこの世の　運命なの　涙おさえた　コンパクト　夜の酒場の　薄化粧━です。当時27歳の吉岡さんにしては大人しい詞になっています。

　ちなみに、男と女に関するブルースでは、小川ゆうじさんの「男と女のブルース」(作詞・三佳令二、作曲・徳久広司)、青山ミチさんの「男ブルース　女ブルース」、三船浩さんの「男のブルース」(作詞・藤間哲郎、作曲・山口俊郎)、戸田智次郎さんの「男が女にブルースを」、藤圭子さんの「女のブルース」(作詞・石坂まさを、作曲・猪俣公章)などがあります。