舟木一夫が京都・南座で選んだ曲⑥

舟木一夫と「赤いグラス」

～2023.5.26-28京都・南座での選曲～

舟木一夫さんが2023年5月26日から28日まで、京都・南座で行ったシアターコンサート第一部「ブルースのか・け・ら」の7曲目に選んだのは、アイ・ジョージさんと志摩ちなみさんが1965年にリリースした「赤いグラス」(作詞・門井八郎、作曲・牧野昭一)でした。

　Wikipediaによると、アイ・ジョージさんは1933年9月27日、香港生まれ。本名は石松譲治。父親が日本人(石油会社の役員)、母親がスペイン系フィリピン人。3歳の時に母親が他界した後、父親と香港、大連、上海、マニラを転々としましたが、経済的には裕福な幼少時代を過ごしたようです。

　1943年に父親がバタヴィアに出征した後、父方の祖母と大阪へ。舟木さんが生まれた1944年に香川県に集団学童疎開しましたが、大阪に残っていた祖母が空襲で亡くなったため孤児となって長野県飯田市の果樹園に引き取られました。1948年に父親が復員したものの、まもなく他界。パン屋、運送屋、ボクシング選手など転々とします。

　流しの歌手として米軍キャンプ、ナイトクラブなどで歌っていた頃、仲間の勧めでテイチクレコードへ。歌謡曲を歌わせたいレコード会社とジャズを歌いたい本人との意見が合わず、再び流しとして日本各地を回っているうち、大阪の高級クラブ「アロー」の支配人に見込まれて専属歌手になりました。

　1959年12月、トリオ・ロス・パンチョスの前座歌手としてデビュー。「アロー」はドドンパの発祥の地と言われており、1961年に作家の開高健さんが「洋酒天国」で広告コピーとして作った「人間らしくやりたいナ…」にアイ・ジョージさんが曲を付けて、サントリーのテレビCMでドドンパのリズムに合わせて歌いました。

　この歌は1962年、おなじくトリオ・ロス・パンチョスの前座歌手だった坂本スミ子さんのレコード「祇園でドドンパ」のB面としてテイチクから発売されています。アイ・ジョージさんはその前年に自身で作曲した「硝子のジョニー」(作詞・石浜恒夫)を出しています。「赤いグラス」のリリースはそれから4年後になります。

　アイ・ジョージさんが凄いのは、1963年10月8日から10日まで、日本人ポピュラー歌手としては初めて米・カーネギーホール公演を果たしたことです。しかも、ちょっと驚いたのは、アイ・ジョージさんがNHK紅白歌合戦に1960年から1971年まで12回連続で出場。「赤いグラス」を歌ったのは1965年の1回だけで、12回すべて異なった歌を歌っていることです。

―　チュエボーなチューボーのクラシック中ブログより　―

　舟木さんがNHK紅白歌合戦に初出場したのは「高校三年生」でデビューした1963年の第14回ですから、アイ・ジョージさんとは1971年の第22回まで9年連続して“共演”していることになります。その間、2人にどんな接点があったのか調べてみましたが、分かりませんでした。

　「赤いグラス」は日活で映画化(監督・中平康、主演・渡哲也)され、1966年5月18日に公開されました。アイ・ジョージさんは「ジョー」として、デュエット相手の志摩ちなみさんも「結城元」として出演しています。志摩ちなみさんは日活映画「夕陽が泣いている」(監督・森永健次郎、主演・和泉雅子)にも出ていましたね。