舟木一夫と「別れのブルース」
「君忘れじのブルース」
~2023.5.26-28京都・南座での選曲~
舟木一夫さんが2023年5月26日から28日まで、京都・南座で行ったシアターコンサート第一部「ブルースのか・け・ら」の2曲目と3曲目にに選んだのは、いずれも淡谷のり子さんが1937(昭和12)年にリリースした「別れのブルース」(作詞・藤浦洸、作曲・服部良一)と、1948(昭和23)年の「君忘れじのブルース」(作詞・大高ひさを、作曲・長津義司)でした。
「舟木一夫ブルースの夕べ」のポスター
舟木さんは若いころから“ブルース”を歌っていまして、まだ24歳だった1969年4月27日と29日には東京・サンケイホールで「舟木一夫ブルースの夕べ」を開催し、「追憶のブルース」などを歌いました。淡谷さんとディック・ミネさんが特別出演しています。なかなか“若手の歌手”には厳しいお2人が顔を揃えて舟木さんのショーに参加していることは、24歳の舟木さんを“一流の歌手”として認めていた証左です。
淡谷さんは1970年発行の舟木さんの写真集「Papyrus」(舟木一夫音楽事務所)の中で、舟木さんに「昔、私が歌の勉強をしていた頃、先生が歌と共に死んでゆくのよとおっしゃって下さいました。私はその言葉を忘れられなく、そしてその言葉にすがりつき生きてまいりました。もし、あなたが何より歌を大切にするならば、どうかこの言葉を忘れないでください」とエールを送っています。
1970年と言えば、舟木さんが23歳か24歳の頃です。舟木さんは昨年、芸能生活60周年を終え、今年12月12日には79歳になります。お伝えしていますように、78歳の今、コンサート会場はどこも超満員です。来年は80歳、傘寿です。「舟木さんにとって『歌』とは?」という私の質問に「命そのものです」と明確に答えています。淡谷さんがおっしゃっている「歌と共に死んでゆく」を実践中です。
ところで、舟木さんは南座でのコンサートの中で、ブルースの意味について「ハッピーの対極にブルーという色がある、そのブルー。『ス』はどこで付いたかは分からない。だから、どこかで付いたんでしょう(笑)。哀しい歌はブルースなんで、そういうと流行歌は9割方がブルースということになる」と話しました。ブルースはもともとブルーズで、淡谷さんも当初は「ブルーズ」と歌っていたという説もあります。
1970(昭和45)年の本牧米軍住宅(写真提供:横浜市史資料室)
「別れのブルース」を作曲した服部良一さんは、1937年に横浜・本牧で立ち寄ったバーで、蓄音機から流れる淡谷さんの「暗い日曜日」を聴いた際、「本牧を舞台にしたブルースを彼女に歌わせよう」と思い立ち、老舗のホテル「バンドホテル」をモデルに構想を練り、コロムビアレコードの文藝部長の秘書をしていた藤浦洸さんに「2人で本牧ブルースを作ろう」と持ち掛けたと言います。
服部さんはソプラノ歌手として評価されていた淡谷さんと担当ディレクターを低音で歌うように説得。淡谷さんも低音を出すために、吸ったこともない煙草を一晩中吸い、一睡もせずに声を荒らした状態でレコーディングしました。それでもコロムビアはあまり乗り気ではなく宣伝活動もほとんどしませんでしたが、日中戦争が始まり満州に駆り出されていた日本兵士の間で流行し始めました。
淡谷さんはこれを契機にその後も、「雨のブルース」や「想い出のブルース」、そして京都・南座のコンサートで舟木さんが歌った「君忘れじのブルース」などを次々にヒットさせ、「ブルースの女王」と呼ばれるようになりました。服部さんは名作曲家と同時に、名プロデューサーでもありましたね。服部さんが亡くなった1993年に、淡谷さんは脳梗塞で倒れ、徐々に歌手活動から遠ざかって行くことになりました。
舟木さんとブルースを語る上で、今回の京都・南座のコンサートの第一部「ブルースのか・け・ら」で淡谷さんの曲をあえて2曲入れ、続けて歌われた意味は大変大きいと思います…。
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《舟木一夫・2023年コンサートスケジュール》
■2月16日(木) 埼玉・大宮ソニックシティ 14:00
■2月24日(金) 東京・かつしかシンフォニ
ーヒルズ 14:00
■3月1日(水) 静岡・アクトシティ浜松 14:00
■3月18日(土)~23日(木)
大阪・新歌舞伎座 シアターコンサート
14:00~16:30
■3月27日(月)~29日(水)
東京・新橋演舞場 シアターコンサート
各 14:00
■4月12日(水) 千葉・松戸森のホール21 14:00
■4月14日(金) 群馬・高崎芸術劇場 14:00
■4月25日(火) 東京・中野サンプラザホール 15:00
■5月10日(水) 岡山市民会館 14:00
■5月11日(木) 広島・上野学園ホール 14:00
■5月26日(金)~28日(日)
京都・南座 シアターコンサート 各13:30
■6月5日(月) 大阪・ふれんどコンサート
大阪・メルパルクホール
14:00
■6月7日(水) 愛知・日本特殊陶業市民会館
14:00
■6月12日(月) 東京・ふれんどコンサート
文京シビックホール・大ホール
15:00
■6月21日(水) 神戸国際会館 14:00
■6月22日(木) 大阪・梅田芸術劇場 14:00
■7月3日(月) 秋田・あきた芸術劇場ミル
ハス 14:00
■7月4日(火) 東京エレクトロンホール宮 城 14:00
■7月11日(火) J:COMホール八王子
14:00
■7月25日(火)~27日(木)
東京・浅草公会堂
25日は17:00、26日と27日は14:00
■8月7日(月) 埼玉・ウエスタ川越
14:00
■8月24日(木) 埼玉・川口総合文化センター
・リリア 14:00
■8月31日(木) 神奈川・相模女子大学グリー
ンホール 14:00
■9月7日(木) 神奈川・神奈川県民ホール
14:00
■9月13日(水) 千葉・市川市文化会館
14:00
■9月22日(金)~24日(日) 名古屋・御園座
各13:00
■10月2日(月) 大田区民ホール・アプリコ
14:30
■10月6日(火) 静岡市民会館 14:00
■10月10日(火) サンシティ越谷市民ホール
14:00
■10月16日(月) フェスティバルホール
14:00
■10月17日(火) ロームシアター京都 14:00
■10月19日(木) 神戸国際会館 14:00
■10月30日(月) 風アダルトに
文京シビックホール 15:00
※確定分のみ掲載しています