舟木一夫が中野サンプラザで選んだ曲⑨

舟木一夫と「星のフラメンコ」

～2023.4.25中野サンプラザでの選曲～

　舟木一夫さんが2023年4月25日に東京・中野サンプラザで行ったラストコンサート第一部「輝さんのおもかげ」の9曲目に選んだのは、西郷輝彦さんが1966年7月1日にリリースした「星のフラメンコ」(作詞&作曲・浜口庫之助、編曲・小杉仁三)でした。いかにも西郷さんらしい、西郷さんに相応しい曲でした。　

　西郷さんは自著「生き方下手」の中で、「青春歌謡曲が続いた後、そろそろビートの効いたリズム感溢れる歌が歌いたくなっていた。デビュー前の洋楽シンガーとしての虫がうずき始めた。そこで生まれたのがハマクラさんの『星娘』だった」と記しています。この曲は大ヒットし、年末の第16回NHK紅白歌合戦でも熱唱しました。

　西郷さんは「それでは次も…」と浜口さんお願いし、一緒にスペインに行き、帰国してから完成したのが「星のフラメンコ」だったと記しています。2人がヨーロッパを旅行したのは1966年2月で、スペインの首都マドリードで本場のフラメンコを観て2人とも「猛烈なリズムにシビレてしまった」(西郷さん)と言います。

　「星のフラメンコ」は発売後2か月で売り上げ50万枚を超す大ヒットになり、1963年に創立した日本クラウンにとっては空前のレコード売り上げ枚数で、全国のレコード店に感謝状を贈ったほどです。1968年時点での累計売り上げが95万枚に達したという記録が残っています。

　一　好きなんだけど　離れてるのさ　　　　　

　　　遠くで星をみるように　　　　　　　　　

　　　好きなんだけど　だまってるのさ　　　　

　　　大事な宝　かくすように　　　　　　　　

　　　君は僕の心の星　　　　　　　　　　　　

　　　君は僕の宝　　　　　　　　　　　　　　

　　　こわしたくない　なくしたくない　　　　

　　　だから　好きなんだけど　離れてるのさ

　二　好きなんだけど　だまってるのさ　　　　

　　　とどかぬ星を　恋した僕の

　　　心をうたう　星のフラメンコ

　　　輝け星よ　君の夜空で

　　　歌えよ涙　僕の心で

　　　君は僕の心の星

　　　君は僕の宝

　　　こわしたくない　なくしたくない

　　　だから　歌うよせめて　心の歌を

　　　ひびけ夜空に　星のフラメンコ

　　　星のフラメンコ

　西郷さんは自著「風の口ぶえ」で次のように記しています。「今でも『星娘』『星のフラメンコ』こそ和製ポップスの“はしり”だと僕は自信をもっている。浜口庫之助先生は、そのころの僕にとって、水をあたえてくれた人……いやあたえてしまった人。僕の奥底にしずんでいたポップス熱をひきずり出してしまった人だった」。