舟木一夫が中野サンプラザで選んだ曲③

舟木一夫と「星娘」

～2023.4.25中野サンプラザでの選曲～

　舟木一夫さんが2023年4月25日に東京・中野サンプラザで行ったラストコンサート第一部「輝さんのおもかげ」の3曲目に選んだのは、1965年9月10日にリリースされた西郷輝彦さんの「星娘」(作詞&作曲・浜口庫之助、編曲・小杉仁三)でした。もともとポップス系の歌を歌いたかった西郷さんが浜口さんに「僕に向いたポップス系の歌を作って欲しい」と懇願して実現したと言います。

　舟木さんは「星娘」を歌い終えた際のトークで「舌を噛みそうでした(笑)」と語りました。ところで、前にも書きましたが、西郷さんと言えば「星」、と言っていいくらいタイトルに「星」が付く曲が多く、逆に言えば「星」が西郷さんの代名詞にさえなっています。以下に「星娘」を含め主な曲(A面)を抽出してみました。

　1964年6月1日　「星空のあいつ」(作詞・水島哲、作曲・北原じゅん)

　1965年8月1日　「星と俺とできめたんだ」(作詞・水島哲、作曲・小杉仁三)

　1965年9月10日「星娘」(作詞&作曲・浜口庫之助)　

　1966年7月1日　「星のフラメンコ」(作詞&作曲・浜口庫之助、編曲・小杉仁三)

　1966年8月1日　「あの星と歩こう」(作詞・能勢英男、作曲・米山正夫)

　1966年10月1日「兄妹の星」(作詞&作曲・米山正夫、編曲・福田正)

　1967年5月1日　「願い星叶い星」(作詞&作曲・浜口庫之助、編曲・小杉仁三)

　1968年8月1日　「星のフィアンセ」(作詞・麻生たかし、作曲・小杉仁三)

　1998年2月15日「星月夜」(作詞&作曲・西郷輝彦、編曲・青木望)

　2000年10月25日「星の涙」(作詞・湯川れい子、作曲・芹澤廣明)

　浜口作品としては「星娘」「星のフラメンコ」「願い星叶い星」の3曲で、いずれも作詞&作曲です。「星娘」の歌い出しは、♪星娘イエイエイ　星娘イエイエイ　星娘イエイエイ…で、中ほどに　♪だけどあの子は　星娘　イエイエイ／♪だからあの子は　星娘イエイエイ…とあり、最後に　♪星娘　イエイエイ　星娘イエイエイ…と繰り返されます。浜口さんならではです、と言うか、こういう詞は浜口さんじゃないと書けません。

　舟木さんがデビュー前に、ホリプロの堀威夫社長(当時)から「コロムビアからデビューすることになると思うが、浜口庫之助先生と遠藤実先生の2人の作曲家なら、どちらの先生がいいかな?」と聞かれます。堀さんはデビュー前の“若造”にこんな質問をされたんですね。舟木さんは動じません。2人の先生のヒット曲と自分の声質、雰囲気を考えて、「遠藤先生にお目にかかりたいと思います」と答えています。この時、浜口先生を選んでいたら、「高校三年生」の誕生は絶対なかったですね。

　人生においては、舟木さんならずとも、運とか偶然とか縁とか、そういうものの巡り合わせで進む道が大きく変わって来るものですが、歌手や俳優を目指す人にとっては極めて重要な“要素”になると思います。舟木さんの場合は、松島アキラさん、堀威夫さん、遠藤実さん、栗山章さん(コロムビアの最初のディレクター)らがキーワードになります。こうした方々に巡り合っていなければ、60周年はなかったかもしれませんね。