舟木一夫が新歌舞伎座で選んだ曲～番外④

舟木一夫と「青春の大阪」

～2023.3新歌舞伎座コンサートでの選曲～

　舟木一夫さんが2023年3月に大阪・新歌舞伎座で行ったコンサート第二部の8曲目に選んだのは1964年9月にリリースされた「青春の大阪」(作詞・西沢爽、作編曲・和田香苗)でした。この歌はB面で島倉千代子さんが歌っている「小鳥が来る街」(作詞・作曲は同じ2人)とともに、当時、大阪市の「緑化百年宣言」に合わせて作られた緑化推進の歌でした。

―　大阪城と大阪の街並み　―

　大阪市は市街化が早くから進み、緑やオープンスペースの少ない都市だったため、1964年4月22日に「大阪をうるおいのある健康な町にするために、ここに強力な緑化運動を開始する。この運動は全市民に変わることのない願いとして今後百年間これを継続する。」という緑化百年宣言を行いました。舟木さんと島倉さん、あるいはコロムビアレコードにどういう形で大阪市から(?)依頼があったのかは分かりません。

　第1回緑化推進大会は第1部と第2部に分かれ、大阪市職員コーラス団が「青春の大阪」をコーラスしたのに続き、「小鳥が来る街」は大阪市吹奏楽団の演奏に合わせて小学生がフォークダンスを楽しみました。舟木さんと島倉さんの出番はありませんでした。大阪市はその後も逐次、公園樹・街路樹の安全対策事業などを施し、この百年宣言を継続させています。

　舟木さんの「青春の大阪」の1番と2番は次の通りです。

　♪いとしい君と　思い出の　　　　　　

　　　小径に植えた　小さな木　　　　　　　

　　　いつか　誰かが　二人のように　　　　

　　　愛を　ちかう　　　　　　　　　　　　

　　　緑の木陰に　なるように　　　　　　　

　　　あゝ　大阪を　青春の　　　　　　　　　　　みどりで　つゝもうよ　　

　 ♪小雨の朝は　御堂筋

　　星降る夜は　中之島

　　べつに　約束　したんじゃないが

　　君も　僕も

　　緑の並木が　好きなだけ

　　あゝ　大阪を　青春の

　　みどりで　みどりで　つゝもうよ

　もう恋愛ソング・タッチですね。西沢さんが舟木さんの雰囲気のほうを重視して書かれたのでしょう。

　一方、島倉さんの「小鳥が来る街」はいろいろ話があります。

　残念な話。この歌は長く大阪市役所の昼休みの庁内放送で流されていました。ところが、橋下徹市長になるや、自身のツイッターに「お昼になると変な音楽が庁舎内に流れます」と書いたものですから、職員のどなたかが気を利かしたのでしょう、早々に変更されたそうです。“変な音楽”とは…少し配慮したほうが良かったですね。

　いい話。「小鳥が来る街」は今でも大阪市環境局のゴミ収集車が収集の際に、オルゴールで流しているようです。歌が出来た当初から使っているとすると、約60年間も市内にさわやかな音楽が流れていることになります。さしもの橋本市長もゴミ収集車までは気配り(!?)が及ばなかったのでしょう。

大阪ハーフマラソン2023　大阪市緑化100年宣言60年目、

緑化のテーマ曲♪小鳥が来る街が流れる、　

　ところで、A面が舟木さん、B面が島倉さんになったことについて、舟木さんは当時ものすごく恐縮したようですが、島倉さんからは“姉さん対応”で何も言われなかったとのことです。ジャケットを二つ折りにして、片面に「青春の大阪」、もう片面に「小鳥が来る街」を載せておけば、気づかいすることなく“両A面”という扱いになったかもしれませんね。