舟木一夫が新歌舞伎座で選んだ曲～番外①

舟木一夫と「立ち話」

～2023.3新歌舞伎座コンサートでの選曲～

舟木一夫さんが2023年3月に大阪・新歌舞伎座で行ったコンサート第二部のオープニング曲として選んだのは1978年6月にリリースした「立ち話」(作詞・尾中美千絵、作曲・三木たかし)でした。第二部の曲にはすでに通常コンサートのところなどでご紹介したものが多いため、“番外”として未紹介の曲だけを綴っていきます。

　その第一弾が「立ち話」になります。B面の「この胸に帰れ」も同じコンビによる曲ですが、舟木さんのシングルで尾中さん、三木さんが一緒に手掛けたものは他にありません。とりわけ名手・三木さんの作曲としては舟木さんの持ち歌の中で貴重な作品ではないでしょうか。

ー NHK人×物×録 ―

　三木さんは1945年1月12日、東京の貧困家庭に生まれました。舟木さんの1歳下です。20歳前後に作曲家の船村徹さんに弟子入りしますが、船村さんから「君は作曲家の方が向いている」と言われて転身します。さすがに人を生かすことを考える船村さんですが、その助言を受け入れた三木さんにも拍手を送りたいです。

　三木さんは1967年に作詞家のなかにし礼さんの推薦を受け、泉アキさんの「恋はハートで」(作詞・なかにし礼)で作曲家デビューしました。今度はなかにしさんの“押し”が効きました。そして1968年、妹の黛ジュンさんのために作った「夕月」(同)が66万枚を売り上げる大ヒットとなり、「三木たかし」の名前を世に知らしめました。

　1976年11月には、阿久悠さんと組んで石川さゆりさんのためにコンセプトアルバム「365日恋もよう」を作ります。毎月1曲でカレンダーのようなアルバムでした。その中の12月の曲だった「津軽海峡・冬景色」をシングルカットして欲しいという声が多く、1977年1月1日にリリースしたところ、たちまちミリオンセラーになりました。

　「立ち話」はその翌年の作品です。三木さんが絶好調の頃でした。舟木さんサイドから三木さんに依頼したのか、別の理由があって三木さん側から舟木さんに楽曲を提供することになったのか。私はその辺の“真相”を知りませんので、ご存知の方は是非教えていただきたく思います。

　いずれにしても、この歌は私個人的にはかなり好きな曲でして、カラオケでは必ず歌っていました(今も時々歌います)。2021年の通常コンサートでは第二部のオープニングとして選曲された歌でもあります。舟木さんの雰囲気にぴったりです。舟木さんご自身もかなりお気に入りの曲だではないでしょうか。

　2021年2月17日(水)から6月14日(月)まで、栃木県日光市の船村徹記念館3階で行われた「舟木一夫企画展」で、来場者から舟木さんのベストソングアンケートを募りました。そして、ベスト50曲を集計したところ、「立ち話」は39位になりました。私はベスト50曲に入っていることに胸をなでおろしたものです。