舟木一夫が新歌舞伎座で選んだ曲⑫

舟木一夫と「殺陣師一代」

～2023.3新歌舞伎座コンサートでの選曲～

　舟木一夫さんが2023年3月に大阪・新歌舞伎座で行ったコンサート第一部の12曲目(ラスト)に選んだのは1967年1月20日にリリースされた橋幸夫さんの「殺陣師一代」(作詞・佐伯孝夫、作曲・𠮷田正)でした。橋さんは5月3日の80歳の誕生日をもって歌手生活にピリオドを打たれました。御三家で現役は舟木さんだけになりましたね。

　長谷川幸延原作の戯曲「殺陣師段平」をもとに作られたことがジャケットなどに記されています。また、橋さんと親しい俳優・市川雷蔵さんが1962年9月公開の大映映画「殺陣師段平」(瑞穂春海監督)で段平の先生・沢田正二郎役で主演したこともレコード制作に関係しています。

　段平というのは、初期の新国劇の頭取であり殺陣師でもあった実在の人物、市川段平のこと。長谷川の戯曲は1949年3月に新国劇で初演されています。翌年8月26日には初めて映画化されていますが、脚本・脚色が黒澤明、監督がマキノ正博という豪華メンバーによる映画でした。

　映画のキャストも凄くて、市川段平=月形龍之介、女房お春=山田五十鈴、娘おきく=月丘千秋、沢田正二郎=市川右太衛門など。1955年版では、段平=森繁久彌、お春=山田五十鈴、おきく=左幸子、沢田=河津清三郎など。そして、1962年版が沢田=市川雷蔵、段平=中村鴈治郎、お春=田中絹代、おきく=高田美和などとなっています。

　テレビでも放送されていて、1962年6月12日にフジテレビのシャープ火曜劇場で単発放送(山茶花究、高倉みゆき、林美智子ほか)、10月12日にも再放送されました。また、1964年12月30日にはNHKでも単発放送(段平=島田正吾、お春=外崎恵美子ほか)されています。

「殺陣師一代」には以下のような台詞がありますが、舟木さんは今回、台詞入りで歌われました。

先生、出来ました。これが先生の好きな

リヤリズムの立廻りだっせ

なに、女房が危篤やさかい、帰れ、

沢田先生わての女房はタテだす。立廻りだす。

こんな立廻りのない芝居やめて、

もっとタテのある芝居やりまひょ。

立廻り、それがわての生命だ、段平の生命だっせ

　橋さんは2021年10月4日に記者会見し、80歳になる2023年5月3日に歌手活動から引退すると発表しました。また、2023年1月12日にも記者会見し、後継者となる「二代目橋幸夫」を選ぶオーディションを4月1日に行うと発表しました。その結果、補欠を含めて4人が合格しました。5月1日に浅草公会堂で行った橋さんのラスト公演に出演しました。何ですかね???という感じがしないでもないです。