舟木一夫と「湖愁」
~2023年コンサートツアーの選曲~
舟木一夫さんが2023年通常コンサートのアンコールの2曲目に選んだのは、松島アキラさんのデビュー曲を“舟木バージョン”として新録音し2022年12月7日にリリースした「湖愁」(作詞・宮川哲夫、作曲・渡久地政信)でした。3月末に東京・新橋演舞場で行ったシアターコンサートのアンコールでは、「この歌を口ずさむとき、17歳の想いが溢れる」という舟木さん自身のナレーションが流れました。
2023年3月末にシアターコンサートが行われた東京・新橋演舞場
舟木さんがステージでもおっしゃっているように、松島さんは1944年7月5日に東京・京橋で生まれていますから、12月12日生まれの舟木さんと5か月違いの同い年ですが、松島さんのデビューが1961年9月5日ですので2年先輩になります。このブログでは繰り返しになるかもしれませんが、舟木さんが言うところの“17歳の想い”を改めて確認しておきたいと思います。
舟木さんが公の場で初めて「湖愁」を歌ったのは1962年2月、CBC(中部日本放送)の人気のど自慢番組「歌のチャンピオン」。父親に歌手になることを反対され、学校をズル休みして出演しました。17歳、高校2年生。テレビ出演前の予選で平野こうじさんの「白い花のブルース」、初めてのテレビ出演で佐川ミツオ(のちに満男)さんの「この涙誰か知る」を歌い、チャンピオン大会で「湖愁」を歌って優勝しました。
舟木さんはテレビに出ることを母親だけに事前に知らせていましたが、父親は出先で仕事中にたまたまテレビで歌う息子を発見。風邪で学校を休んでいた担任教諭も自宅で見ていて仰天しました。舟木さんは大目玉をくらいましたが、母親は夫に「あまり叱らない方がいいですよ。好きなことは仕方ないですからね」となだめたといいます。舟木さんはこの優勝を契機に歌手への想いが一層強くなりました。
そして翌月、ガールフレンドに振られチケットがあるという友人に誘われて名古屋のジャズ喫茶に松島アキラショーを観に行きました。ショーの最後に用意された松島さんと歌うコーナーに選ばれて、本人の前で「湖愁」を歌いました。これが松島さんの取材で東京から来ていた週刊明星の記者の目に留まり、ホリプロの堀威夫社長を通じてコロムビア専属の作曲家・遠藤実さんのレッスンを受けることになりました。
コロムビアの歌手になるためにはオーディションを受けなくてはなりません。正確な日時は分かりませんが、オーディション当日、舟木さんは「湖愁」のほか、山田真二さんの「哀愁の街に霧が降る」、平野こうじさんの「白い花のブルース」を歌いました。“ブルースを歌う歌手”をアピールしていますね。ただ、この3曲はいずれもビクターの歌手の歌でした。
ピアノを弾いていた作曲家の山路進一さんは「これはコロムビアのオーディションなんだから、1曲ぐらいはコロムビアの歌手の歌を歌うもんだけどね…。君は面白いね」と伝えました。というわけで、舟木さんの17歳は、まさに「湖愁」で駆け巡ったと言うことが出来ます。舟木さんは「偶然に偶然が重なった」と言われますが、やはり自ら切り開いて掴んだ歌手―という表現の方が当たっていると思いますね。
舟木さんは“寒い時代”を潜り抜け復活した後は、自分の納得できる歌だけを新曲としてリリースしてきました。また、いわゆる“周年曲”へのこだわりも捨ててきました。「湖愁」を新しいアレンジで新曲としてリリースしたのは、2018年7月4日に発売した「『その人は昔』のテーマ」以来4年ぶりでした。舟木さんは「4年かかっている」という表現を使いました。
デビューから60年。78歳になった今、上田成幸少年を「高校三年生」に導き、舟木一夫として世に出してくれた「湖愁」を新しいアレンジで歌い直し、新曲として届けたいと思いました。東京・新橋演舞場で開いた2022年12月末のロングコンサートで、舟木さんは「新しい年へ向かおうと、『湖愁』を歌ったことで、どうやら60年から先の一歩を踏み出せそうです」と、会場のお客さんに力強く語りかけました。
◇
《舟木一夫・2023年コンサートスケジュール》
■2月16日(木) 埼玉・大宮ソニックシティ
14:00
■2月24日(金) 東京・かつしかシンフォニ
ーヒルズ 14:00
■3月1日(水) 静岡・アクトシティ浜松 14:00
■3月18日(土)~23日(木)
大阪・新歌舞伎座 シアターコンサート
14:00~16:30
■3月27日(月)~29日(水)
東京・新橋演舞場 シアターコンサート
各 14:00
■4月12日(水) 千葉・松戸森のホール21 14:00
■4月14日(金) 群馬・高崎芸術劇場 14:00
■4月25日(火) 東京・中野サンプラザホール 15:00
■5月10日(水) 岡山市民会館 14:00
■5月11日(木) 広島・上野学園ホール 14:00
■5月26日(金)~28日(日)
京都・南座 シアターコンサート 各13:30
■6月5日(月) 大阪・ふれんどコンサート
大阪・メルパルクホール
14:00
■6月7日(水) 愛知・日本特殊陶業市民会館 14:00
■6月12日(月) 東京・ふれんどコンサート
文京シビックホール・大ホール
15:00
■6月21日(水) 神戸国際会館 14:00
■6月22日(木) 大阪・梅田芸術劇場 14:00
■7月3日(月) 秋田・あきた芸術劇場ミル
ハス 14:00
■7月4日(火) 東京エレクトロンホール宮 城 14:00
■7月11日(火) J:COMホール八王子
14:00
■7月25日(火)~27日(木)
東京・浅草公会堂
25日は17:00、26日と27日は14:00
■8月7日(月) 埼玉・ウエスタ川越
14:00
■8月24日(木) 埼玉・川口総合文化センター
・リリア 14:00
■8月31日(木) 神奈川・相模女子大学グリー
ンホール 14:00
※確定分のみ掲載しています