舟木一夫と「高校三年生」

~2023年コンサートツアーの選曲~

 

舟木一夫「高校三年生 cw 水色のひと」 CD-R

 

   舟木一夫さんが2023年通常コンサートの17番目に選んだのは、1963年6月5日にリリースしたデビュー曲の「高校三年生」(作詞・丘灯至夫、作曲・遠藤実)でした。通常コンサートやシアターコンサートでは絶対外せない曲です。そういう意味では、一番数多く歌っている曲でもあります。

 

 舟木さんにはそれぞれの曲について、「あの場面で歌ったのが一番いい出来だった」と言うのがありますが、「高校三年生」だけはそういう場面がまだありません。最後まで、そういう状況が続くかもしれません。今度お会いした時に改めて確認してみたいと思っています。

 

 実は、私たちがコンサートで当たり前に聴いている「高校三年生」が存在しなかった可能性があります。一つは丘さんが舟木さんのデビュー7年前の1955年5月、「高原列車は行く」などでヒットしていた岡本敦郎さんのために書いた♪紺の制服 ギャザアのひだに 若く明るい陽がのぼる ああ高校三年生…という全く別の歌詞の「高校三年生」がありました。

 

 実現していたら、舟木さんの「高校三年生」はありませんでした。しかし、当時はコロムビアサイドで「この『高校三年生』は大人の歌謡曲に相応しくない」という理由でボツになりました。舟木さんの時にも同じような議論がありましたが、当時の有力なディレクターらの“後押し”で突破しました。

 

白い花の咲く頃

 

 もう一つは遠藤さん側の事情です。遠藤さんは最初、のちの「学園広場」と同じようなワルツの曲をつけていました。舟木さん(当時はまだ上田成幸クン)とコロムビアの栗山章ディレクターが自宅に訪ねてくる朝、遠藤さんは気になってもう一度ピアノで弾いてみました。

 

 何か違和感がありました。来年(1964年)は東京オリンピックの年で、街は活気づいている。もっと明るく元気な曲調の方がいい。自問自答し10分か15分のうちに一気にマーチ風の曲に作り替えました。到着した2人には作り直した譜面を渡しました。作り直していなかったら……。

 

ー 開催地決定を報じた読売新聞(1959年5月27日付)ー

 

 

 さらに、この曲の誕生には“偶然”がありました。1963年1月15日、舟木さんと栗山さんは新年の挨拶のため遠藤さん宅に向かうタクシーの中で、栗山さんは舟木さんに10編の歌詞を見せ、「すでに私がA面とB面を決めて遠藤先生に作曲を頼んであるんだけど、君だったらどれを選ぶ?」と言われます。

 

 舟木さんは丁寧に目を通し、まずA面として「水色のひと」、次いでB面用に「高校三年生」を選びました。栗山さんは「偶然だが、僕も君と同じものを選んだ。僕とA面とB面が逆だけどね」と笑いました。のちに栗山さんに当時の様子を聞いてみましたが、「その件は詳しく記憶に残っていない」と言われました。

 

 

 いずれにしても、この2編は全く内容が異なるもので、出来上がった曲調も全く別のものになりました。栗山さんは、舟木さんが「ブルースを歌う歌手になりたい」と希望していたのを知っていましたから、B面についてはそのような曲調にしてほしいと遠藤さんに頼んだんじゃないでしょうか。

 

 そして万一、A面が売れなかったら、B面に切り替えようとしていたのかもしれません。しかし、それは杞憂に終わりました。舟木さんは今でも「3分02秒が僕の一生を決めた」と言いますからね。もっとも、私は舟木さんが今でも「水色のひと」を歌う際は「この歌でもヒットしたに違いない」と思いながら聴いています。

 

 

♡  ♡  ♡

 

 「高校三年生」については沢山書いてきましたが、歌碑のことはあまり書いていませんので、今回記してみようと思います。歌碑は私の知る限り、丘さんの故郷・福島県内に2か所と、歌詞のモデルになった東京都内の高校に建てられています。

 

   ■東京都世田谷区北沢1-16-10 私立松蔭学園正門付近

  2000年10月28日に除幕式。丘夫妻出席。同学園女子生徒60人と「高校三年生」

  を合唱。式があることを知った舟木ファンが大型バスで駆けつけたということで

  す。舟木さんは高知市内でG3Kコンサートのため欠席しました。

 

― 歌碑を訪ねて西東より ー

 

  ※私がお邪魔した時は、別館に丘さんが書かれた大きな額入りの「高校三年生」

  の歌詞が飾ってありました

 

 ■福島県郡山市谷島町1  JR東北本線郡山駅東口広場

  2002年4月13日に除幕式。丘夫妻、遠藤さん、舟木さん、歌碑彫刻家の三坂制

  氏らが出席。関係者、舟木ファンら約500人が参加しました。

 

― 歌碑を訪ねて西東より ー

 

 ■福島県田村郡小野町大字小野新町中通2  ふるさと文化の館前

  丘灯至夫生誕100年記念事業の一環として建立される。2017年12月3日に除幕

  式。記念碑のボタンを押すと「高校三年生」が流れるそうです。ふるさと文化

  の館内に丘灯至夫記念館があります。

 

― 歌碑を訪ねて西東より ー

 

 

 

 

《2023年舟木一夫コンサート・スケジュール》

■2月16日(木)   埼玉・大宮ソニックシティ

                                     14:00             

      

 

■2月24日(金)  東京・かつしかシンフォニ

        ーヒルズ       14:00

            

 

■3月1日(水)     静岡・アクトシティ浜松                   14:00 

 

■3月18日(土)~23日(木)   

   大阪・新歌舞伎座 シアターコンサート   

            14:00~16:30

 

 

 

 ■3月27日(月)~29日(水)

       東京・新橋演舞場 シアターコンサート

        各 14:00 

 

 

■4月12日(水)    千葉・松戸森のホール21                 14:00 

 ■4月14日(金)    群馬・高崎芸術劇場                           14:00 

 

 ■4月25日(火)  東京・中野サンプラザホール                          15:00 

 

 

 ■5月10日(水)    岡山市民会館                         14:00 

 ■5月11日(木)    広島・上野学園ホール             14:00 

   

  ■5月26日(金)~28日(日) 

             京都・南座 シアターコンサート              各13:30 

 

 

  ■6月5日(月)  大阪・ふれんどコンサート

         大阪・メルパルクホール

                                                     14:00

 

■6月7日(水)    愛知・日本特殊陶業市民会館              14:00

 

 ■6月12日(月)    東京・ふれんどコンサート

                   文京シビックホール・大ホール 

                15:00

 

 ■6月21日(水)    神戸国際会館                                                                      14:00

 

■6月22日(木)    大阪・梅田芸術劇場                             14:00

 

 ■7月3日(月)  秋田・あきた芸術劇場ミル 

         ハス                      14:00 

                  

 ■7月4日(火)  東京エレクトロンホール宮                                城        14:00

 

 ■7月11日(火) J:COMホール八王子

                                                     14:00

 

 ■7月25日(火)~27日(木)

          東京・浅草公会堂

             25日は17:00、26日と27日は14:00

 

 ■8月7日(月)  埼玉・ウエスタ川越

                                                     14:00

 

 ■8月24日(木) 埼玉・川口総合文化センター

        ・リリア      14:00

 

 ■8月31日(木) 神奈川・相模女子大学グリー          

        ンホール      14:00

 

 

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