2023年ツアーで舟木一夫が選んだ曲⑮

舟木一夫と「仲間たち」

～2023年コンサートツアーの選曲～

　舟木一夫さんが2023年通常コンサートの15曲目に選んだのは、1963年11月にリリースされた「仲間たち」(作詞・西沢爽、作曲・遠藤実)で、B面の「はるかなる山」も同じ作詞・作曲家の作品です。卒業後に故郷の学友たちを回顧する歌で、軽いタッチの口笛による間奏が効いています。

　この歌も大ヒットし、日活で映画化されました。監督は柳瀬観(のぞむ)さんで、公開は1964年3月14日です。共演は「学園広場」に続いて松原智恵子さん、ハマヤンこと浜田光夫さんとは初共演でした。舟木さんはこの映画以降、日活映画の計5本を柳瀬監督の作品に出演することになります。

　私は映画のスジをまとめるのが上手くないので、「ぴあ」の解説によると―。東北の田舎から出てきた運転手の光弘(浜田)は、バスの車掌・節子(松原)と知り合う。光弘は自分のトラックを持ちたいと思い、今まで以上に働いてお金を貯めようと頑張るが、ある日事故を起こして入院する。やけを起こしかけた光弘を、節子と、同郷の友人(舟木)が温かく包み込む…。爽やかな青春もの。

　柳瀬監督は1932年2月4日、東京都大田区大井町の生まれ。中央大学杉並高校を経て、早稲田大学第一文学部演劇専修を卒業後、日活撮影所に入社して契約助監督。同時に、早稲田大学大学院文科で映画を専攻したものの中退。鈴木清順監督らの助監督を務めた後、1963年の「探偵事務所23銭と女に弱い男」で監督に昇進します。舟木さんの「仲間たち」を撮ったのは32歳の時でした。

　舟木さんは映画「仲間たち」について、チャンネルNECOの特集企画の中で、次のように語っています。

　流行歌の世界ではなかなか感じられないことですが、この映画に参加したことで、(モノ作りは)スタッフに支えられてこそやっていられるんだということを最初に感じた作品でした。この頃は自分の動きのぎこちなさが分かってきていて、迷惑をかけていることを早く直さないといけないということをボチボチ感じ始めていました。

　一方、柳瀬監督は当時の映画雑誌で舟木さんについて以下のように語っています。

　私が初めて舟木クンの映画を撮ったのは、彼が歌手になって1年目くらいで人気の頂点に立っていましたが、「こんなにおとなしい子に演技の要求が出来るのか」と戸惑いました。前の作品に比べ台詞も多く役も重要でした。彼は感受性が強く、物事に対して敏感に反応する。天才の閃きといったものを感じました。彼に接していると、その誠実さに打たれます。物事をいい加減に出来ない性格で、自分が納得いくまで食い下がる。その根性がたのもしい。舟木クンを通じて私は大きな意味で青春のモラル、青春の理想像を描きたいと考えています。

　改めて、柳瀬監督の舟木作品を並べておきます。

　■「仲間たち」(1964年3月14日公開)　※松原智恵子、浜田光夫ら

　■「花咲く乙女たち」(1965年1月24日公開) ※西尾三枝子、山内賢ら

　■「北国の街」(1965年3月20日公開)　※和泉雅子、山内賢ら

■「東京は恋する」(1965年9月18日公開)　※和田浩次、伊藤るり子ら

　■「高原のお嬢さん」(1965年12月4日公開)　※和泉雅子、山内賢ら

　柳瀬さんは1965年にフリーになり、「ハレンチ学園」「プレイガール」などのテレビドラマの演出も行っていました。2009年2月21日、前立腺がんのため亡くなりました。77歳でした。