2023年ツアーで舟木一夫が選んだ曲⑬

舟木一夫と「あゝ青春の胸の血は」

～2023年コンサートツアーの選曲～

　舟木一夫さんが2023年通常コンサートの13曲目に選んだのは1964年1月にリリースした7枚目のシングル「あゝ青春の胸の血は」(作詞・西沢爽、作曲・遠藤実)。デビュー2年目の1964年は、この歌をはじめ「涙の敗戦投手」「君たちがいて僕がいた」「まだ見ぬ君を恋うる歌」などシングル15枚とアルバム2枚をリリースしていますから、新譜が届いてからレコーディングまで1週間という慌ただしさでした。

　超多忙の中、舟木さんはこの年、後援会の発足や後援会誌の発行など、今年で60周年になる“大切なもの“の誕生に立ち合っています。これについてはまた、回を変えて詳しくお伝えする機会があるかと思います。

　ところで、「あゝ青春の胸の血は」を作詞した西沢爽さんは、この曲以外にも何曲か舟木さんの歌の作詞をしています。私の手元にある資料だけを頼りに振り返ってみます。間違いなどがあれば、また、ご指摘ください。

　■「仲間たち」(1963年11月、作曲・遠藤実)　

　■「はるかなる山」(「仲間たち」のB面、作曲・遠藤実)

　■「美しい人」(1963年11月、アルバム「舟木一夫　花のステージ第一集」に

　　収録、作曲・遠藤実)　※アルバムでは「美しいひと」になっています

　■「夕月の乙女」(1964年1月、「あゝ青春の胸の血は」のB面、作曲・遠藤実)

※この歌は、作家の内館牧子さんが乙女の頃に聴いて以来、舟木さんの虜

　　　(とりこ)になり、今でも口ずさんでおられるようです。西條八十さんが

　　　1948年12月5日に東光出版社から長編少女小説「夕月乙女」を出版して

　　　いますが、タイトルはこの小説も意識されたんでしょうか?

　■「青春の大阪」(1964年9月、作曲・和田香苗)　

　　※B面は「小鳥が来る街」(島倉千代子)

　■「右衛門七討入り」(1964年11月、作曲・遠藤実)

　■「右衛門七節」(「右衛門七討入り」のB面、作曲・遠藤実)

　■「あゝりんどうの花咲けど」(1965年6月、作曲・遠藤実)

　■「待っている人」(「あゝりんどうの花咲けど」のB面、作曲・遠藤実)

　■「ふるさとの乙女」(1966年1月、「山のかなたに」のB面、作曲・遠藤実)

　■「おもいをこめて手をふろう」(1966年4月、「友を送る歌」のB面、作曲・

　　遠藤実)

　■「朝日音頭」(1967年ごろ、福井県朝日町が第23回福井国体=1968年1月～

　　10月=の開催に合わせて委託して制作したもの、作曲・和田香苗)

　■「北風のビギン」(1968年1月、「くちなしのバラード」のB面、作曲・和田

　　香苗)　※日活映画「花の恋人たち」の挿入歌

　■「ああ!!桜田門」(1969年7月、作曲・船村徹)

　■「恋のお江戸の歌げんか」(「ああ!!桜田門」のB面、光本幸子さんとのデュ

　　エット曲、作曲・山路進一)

　■「可愛い人」「エメラルドの月」(1969年のアルバム「西沢爽特集　叙情歌

　　をあなたに」に収録されているようですが、確認できませんでした)

　■「寝顔」(1974年9月、「旅路」のB面、作曲・遠藤実)　

　　⇒西沢さんは1974年に休業宣言し、作詞活動の第一線から退いていますから

　　　これが最後に近い作詞ではないでしょうか?

西沢さんの作品には、美空ひばりさんの「ひばりの佐渡情話」、島倉千代子さんの「からたち日記」もあります。舟木さんは「ひばりの佐渡情話」を2016年7月25日のシアターコンサート「美空ひばりスペシャル～ひばりが翔んだ日々～」(東京・新橋演舞場)で、「からたち日記」は2014年5月31日のシアターコンサート「遠藤実スペシャル～七回忌に偲ぶ～」(同)で歌いました。

　西沢さんは作詞活動をやめた後、中世以降の歌謡曲研究に専念し、「日本近代歌謡史」や「雑学歌謡昭和史」など多くの著作を発表し、1989年には「日本近代歌謡の実証的研究」で國學院大で文学博士号を取得し、1990年から1991年にかけて、桜風社から“実証的研究”の3部作を出版。1994年には勲四等旭日小綬章を受章しています。2000年7月19日に敗血症のため81歳で亡くなりました。